実は6月に入り、勤務先の立川のクリニックで「インフルエンザ陽性」が確認される日が連日続いたことがありました。「夏にインフルエンザが出始めるなんて……」と驚いていたら、6月中旬に私も「インフルエンザA型」を診断しました。

 その方は、38度を超える発熱と強い倦怠感を自覚して受診された50代の男性。額には汗を浮かべており、倦怠感がとても強そうで、オミクロン株のコロナというよりは、デルタ株のコロナ感染のような、そんな印象だったことを覚えています。「息子の学校で、コロナではなかったけれども8人ほど発熱がでて、学級閉鎖になっています……」とおっしゃったので、「インフルエンザかもしれない」と思い迅速検査を行ったところ、「インフルエンザA型」で陽性が出たのでした。

 コロナパンデミック以降、すっかり流行しなくなったインフルエンザですが、日本とは正反対の南半球に位置し、日本が夏の間に冬を迎えるオーストラリアでは、今年の3月以降、インフルエンザが増加傾向にあります 。

 2022年6月19日までの2週間で5万5,101件のインフルエンザが報告されており、2022年の報告数の37.4%を、この2週間の報告数が占めているといいます。私も先日、インフルエンザA型陽性を確認したのですが、オーストラリアでも、確認されているインフルエンザのうち83.4%をA型が占め、B型は0.1%であるようです。

 冬のオーストラリアでインフルエンザが流行っていること、次第に国を超えた往来が元に戻りつつあることなどから、今年の冬は北半球にある日本でもインフルエンザが流行する可能性が高いと考えられます。

 インフルエンザウイルスには多くの亜型が存在しており、ウイルスの構造は常に少しずつ変化しています。そのため、世界保健機関(WHO)は毎年世界中からデータを集め、専門家の意見を元に、最も一般的に流行すると示唆される3~4種類の型をインフルエンザの予防接種として使用することを推奨します。日本でも、WHOのデータをもとに国内の流行状況や世界各国におけるインフルエンザの流行状況などを考慮し、ワクチンの型を決めています。

 コロナパンデミック以降、インフルエンザが流行しなかったこともあり、インフルエンザの予防接種をしなかったという方もいらっしゃると思います。コロナワクチン同様、インフルエンワクチンも接種したからといって、インフルエンザに絶対かからない、というワクチンではありません。

 インフルエンザの発症を予防することや、発症後の重症化や死亡を予防することに関して一定の効果があると報告されており、インフルエンザの予防接種は重症化を予防する点で有効であるとされています。今年は、インフルエンザの予防接種が重要になるのではないかと、私は考えています。

 山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。2022年東京大学大学院医学系研究科修了。ナビタスクリニック(立川)内科医、よしのぶクリニック(鹿児島)非常勤医師、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

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