厳しいプロボクシングの世界で、40歳を超えて戦い続ける選手がいる。
堀川謙一、42歳。41勝(14KO)16敗1分、プロのリングで積み重ねた58試合は現役最多記録だ。そして、東洋太平洋(OPBF)ライトフライ級のベルトを持つチャンピオンでもある――。
そんな大ベテランが7月2日、後楽園ホールで「世界前哨戦」とも言われる大一番に挑む。自身が持つ東洋太平洋王座、対戦相手が持つ日本王座、そして現在空位となっているWBOアジアパシフィック王座の地域タイトル3つをかけたライトフライ級タイトルマッチだ。対戦相手の現日本チャンピオン・岩田翔吉(帝拳)はプロ戦績8戦8勝(6KO)。将来の世界チャンピオン候補と言われる日本屈指のホープでもある。
42歳のチャンピオンは何を目指し、戦い続けてきたのか。注目の一戦を前に、何を思うのか。所属する三迫ジムに、堀川を訪ねた。
「体は仕上がってきています。早い段階から絞れてきていて、減量も順調。今はほかの仕事はほとんどしないで、ボクシング一筋ですね。ときどき、友人のスイーツ屋を手伝うくらい。ファイトマネーだけで生活するのは楽じゃないけれど、アルバイトをしてしまうとボクシングで頑張り切れなくなる。だから、今はボクシングだけの生活です」
マイク・タイソンに憧れ、高校卒業と同時に地元・京都のボクシングジムに入門した。20歳でプロデビュー。しかし、ここまでのキャリアは決して華々しいものではなかった。
デビュー戦こそKO勝ちしたが、2戦目は判定負け。その後も勝ったり負けたりを繰り返し、10戦を終えた時点での戦績は6勝4敗だった。
初めて日本ランキングに入ったのは25歳。念願の日本タイトルマッチに初めて挑んだときには29歳になっていた。体へのダメージが蓄積するボクシングは、選手寿命の長いスポーツではない。29歳はボクサーとしては十分なベテランだ。堀川自身、「30歳までのスポーツ」と思いながらリングに上がっていたという。
「20代後半は日本ランキングに入りながらなかなかタイトルマッチにたどり着けなくて、いつまでできるのか、常にもうギリギリだと思いながら戦っていました」