
国葬に際し、米国指導者たちは、日米同盟強化、アジア太平洋での日本の役割増大などをほめちぎり、その立役者として安倍氏を礼賛するだろう。日本国民もメディアも米国に弱い。自尊心をくすぐられ、「愛国心」は一気に高まる。敵基地攻撃能力、防衛費のGDP比2%への増額などにも国民の支持は高まり、大きな反対もなく通るだろう。
この空気は自衛隊を憲法に書き込む改憲論をも支配する。その中で、憲法改正の議論を拒むことは難しく、3分の2の多数決で押し切られる展開も十分にあり得る。さらに、立憲民主党が強く抵抗すれば、岸田首相はそれを争点に衆議院を解散することも可能だ。来夏あるいは最短で今秋の解散というサプライズも否定できない。野党はバラバラのままで、自民圧勝なら、昨年秋の衆議院選、先の参議院選に続き、国政選挙3連勝。それだけの実績を作れば、2年後の自民党総裁選では岸田氏優勢となる。
逆に国葬で支持率が下がっても、選挙のない「黄金の3年間」を使い支持率回復を待てばよい。
安倍氏は、自らの葬儀を通じてかなわなかった夢を果たそうとしているのかもしれない。
※週刊朝日 2022年8月5日号から