ゾウもライオンもいないけど
それにしても、なぜバイオパークの動画が人気なのだろう。YouTubeチャンネルの登録者数は、おそらく国内の動物園のYouTubeチャンネルのなかで最多。パンダやシロクマといった「スター」はいない。ゾウやライオンもいない。人気なのは、カピバラ、モルモットと、地味め。動画にたびたび登場する飼育員の春岡俊彦さんはこう話す。
「ユーチューバーっぽい要素を取り入れています。飼育員がしゃべりつつ、動物も映し、パークのゆるい雰囲気が伝わるように意識しています」
神近さんも言う。
「飼育員のファンになってくださったお客さまが、事務所までお菓子を持ってきてくれることもあります」
飼育員が気軽にカメラに話しかける様子はまるで近所のお兄さん、お姉さん。飼育員のツッコミやテロップが笑える。
■鳥にあげたエサをヤギが横取り
今年6月に投稿された動画「長崎名物あげたらモルモットがぎゅうぎゅうなって可愛すぎた!」は、飼育員が「こんにちはー。今日は旬の果物です。葉っぱだけで、皆さん(何か)わかりますかね?」とゆるく始まる。ビワの実と葉を動物たちにあげる企画だ。動物と飼育員の戯れに癒やされる。ヨウムのピーちゃんに実をあげると、ヤギのキャサリンが近づいてきて、実を横取りする。ピーちゃんが驚いて振り返り、後ずさり。飼育員の脱力したような笑いの後、「がんばれ、ピーちゃん」のテロップが利いている。
チンチラに葉っぱを渡すと、少しかじって、固まって、そのまま葉をポトリと落とした。飼育員が「どういうこと?何かショッキングなことがあったみたいな」とつっこむ。スロー再生したり、画面をモノクロにしたりして、より笑える演出をしている。もちろん、動物のかわいさも忘れない。モルモットが横一列に並んで葉っぱをペりぺりとかじるシーンには癒やされる。
■ユーチューバー事務所が協力
ここ1年、動画の面白さが増したのは、ユーチューバー事務所「UUUM」の協力が大きいという。動画の編集、アイデア出しをしてもらうようになり、さらに再生数が増えるようになった。神近さんは言う。
「SNSを初めて、すごく勉強になりました。コメントやいいね、再生数によってファンのリアクションがダイレクトに届きます。それに、どんな人が見ているかもわかります。お客さまが何を求めているのかに、とても敏感になりました」
バイオパーク以外にも、動画配信による収益で経営を支えている動物園や水族館は少なくない。中には投げ銭システムを利用して「オンライン餌やり」ができるところもある。