最も大きな変更は、資産や収入条件のハードルが一気に上がったことだ。例えば、「マレーシア外で稼いでいる安定的収入」が、従来のひと月当たり1万リンギ(約27万円)が一気に4万リンギ(約108万円)に引き上げられる。

 マレーシア政府が外国人定住者を絞り込みたい理由とはなんだろうか。ひとつのヒントになりそうな話をM子さんが教えてくれた。

■英語を習うはずが…教室で飛び交うのは中国語

 M子さんの子供はペナン島のインターナショナルスクールに通っているのだが、「カリキュラムには満足しています。ところが、中国大陸出身のお子さんが次々と増えてしまっていて……」と嘆く。英語を習うために入学したのに、授業前後の教室で飛び交う言語は中国語。子供はいつのまにか、英語ではなく中国語を覚えるようになっている。

 もともとマレーシアはインターナショナルスクールの誘致、そして外国人学生の募集にも力を入れており、米国や英国はもとより、豪州やカナダなどの名門校への進学も目指せる卒業資格が取得できるメリットがある。

 M子さんによると、中国の人々は「『マレーシアは不動産価格が中国の大都市と比べて、格段に安い。環境は良いし、中華料理も安く食べられる』って手放しで喜んでいます」

■華人にとってマレーシアは「中国大陸の地方都市のよう」

 マレーシアは、全人口のおよそ24%を中国本土にルーツを持つ華人が占める。民族別人口のうち、マレー系が65%と多数派を占めるが、8%いるインド系とともに、3つの主要民族が共存しているというのがマレーシアの特徴と言えようか。使用言語や食生活などの文化も3民族間で大きく異なり、例えば、華人の間では中国大陸で使われている標準中国語(日本では北京語とも)が広く使われている。

「マレーシアには華人が至るところにいます。中国の人によっては、大陸の地方都市のどこか、くらいにしか思っていない人もいるようです(M子さん)」

 言葉が通じて、物価も安いとなれば、住環境の良いマレーシアを、中国大陸の富裕層が見逃すはずはない。続々と定住しているのも当然のことだ。数字で見ても中国国籍者のMM2Hビザ取得者に占める割合は全体の30%を超えている。

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