■「彼らがこの国から消えるとは到底思えません」

 マレーシア国内が賛否両論に沸く中、8月下旬に生まれたばかりのイスマイル・サブリ新政権で内務大臣を担うハムザ・ザイヌディン氏は、9月1日の会見で「ビザを取りながらもマレーシアに全く住まない人が(全体の6分の1近い)7000人に達する」と説明。「この国への経済貢献ができる『良質な定住者』に絞るのが目的」と強調する一方、「厳格化について再検討する」とも約束した。

 もし、ビザ既得者に対し、従来規定に近い形でビザの延長申請を認めるのであれば、M子さんのようなマレーシアだけに居を構える外国人は今後と同じように住み続けられることになる。しかし、M子さんはこうも指摘する。「保証金などを値上げしたところで、中国の富裕層からすれば大した額ではない。彼らがこの国から消えるとは到底思えません」

 マレーシアは近年、急速な経済成長を遂げてきた。しかし、それをテコに、国外への勢力拡大を狙う中国の動きを野放しにしておくのは妥当な判断と言えるだろうか。イスマイル・サブリ首相を軸とする新政権はどんな結論を出すのか、注視したい。

さかい もとみ(さかい・もとみ)/ジャーナリスト
1965年名古屋生まれ。日大国際関係学部卒。香港で15年余り暮らしたのち、2008年8月からロンドン在住、日本人の妻と2人暮らし。在英ジャーナリストとして、日本国内の媒体向けに記事を執筆。旅行業にも従事し、英国訪問の日本人らのアテンド役も担う。
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