「あがら」の豚骨中華そばは一杯750円。本格的な和歌山ラーメンとして人気を集めている(筆者撮影)
「あがら」の豚骨中華そばは一杯750円。本格的な和歌山ラーメンとして人気を集めている(筆者撮影)
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 日本に数多くあるラーメン店の中でも、屈指の名店と呼ばれる店がある。そんな名店と、名店店主が愛する一杯を紹介する本連載。埼玉で本格的な和歌山ラーメンを提供する店主が愛する一杯は、“手打式”の麺で圧倒的な個性を放つ名店の一杯だった。



■「また食べたい一杯」を目指し続けた埼玉の和歌山ラーメン

 JR埼京線の戸田公園駅から徒歩5分。埼玉県戸田市の街に本格的な和歌山ラーメンが食べられる人気店がある。「麺屋あがら」だ。和歌山出身の店主・阪上晴郎さんが、地元のラーメンを都心に根付かせるべく奮闘している。

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麺屋あがら/〒335-0022 埼玉県戸田市上戸田5-19-2/11:30~15:00/18:00~21:00(L.O.20:45)、土・日11:30~15:00/筆者撮影
麺屋あがら/〒335-0022 埼玉県戸田市上戸田5-19-2/11:30~15:00/18:00~21:00(L.O.20:45)、土・日11:30~15:00/筆者撮影


「あがら」は、東京でも戦える和歌山ラーメンを目指した。和歌山の名店「うらしま」「しま彰」のような濃厚なラーメンをイメージし、豚骨が濃くて醤油の味がしっかり立つ一杯を作り上げていった。阪上さんはこう説明する。

「豚骨スープは2回濾すことで臭みが取れて、濃厚ながらくどくない綺麗なスープに仕上がります。醤油は和歌山の湯浅醤油を使っています」

 和歌山県有田郡湯浅町は醤油醸造の発祥の地として、2017年に日本遺産認定もされた町でもある。樽でじっくり熟成した醤油は旨味が凝縮され、ほんのり甘みがあってまろやかになるという。この旨味が和歌山ラーメンの味を作り上げているのだ。阪上さんにとっては幼少期から食べている当たり前の味だったが、東京ではなかなか味わえないため、地元から離れて改めてその魅力に気づいたという。

「あがら」店主の阪上晴郎さん(筆者撮影)
「あがら」店主の阪上晴郎さん(筆者撮影)


 寸胴のフタの締め方一つにもこだわり、「また食べたい一杯」を目指し続けた。オープン翌年の14年以降は日本最大級のラーメンイベント「東京ラーメンショー」に5年連続で出店し、そのたびに反響を呼んだ。

「ラーメンショーは大きな挑戦でした。和歌山代表として、ちゃんとしたものを作って和歌山ラーメン自体をしっかりアピールしなければと思いました。地元の職人さんたちにもたくさん褒められ、ほっとしましたね」(阪上さん)

「あがら」の豚骨中華そば。チャーシューやメンマ、ナルト、ネギがトッピングされている(筆者撮影)
「あがら」の豚骨中華そば。チャーシューやメンマ、ナルト、ネギがトッピングされている(筆者撮影)


 和歌山ラーメンの美味しさを「あがら」で知ってもらい、実際に和歌山に足を運んでもらうことが阪上さんの願いでもある。そんな阪上さんが愛するお店は、東京都葛飾区亀有にある手打式中華そばの店だ。すべて手作りにこだわる唯一無二の一杯を提供する名店だ。

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井手隊長

井手隊長

井手隊長(いでたいちょう)/全国47都道府県のラーメンを食べ歩くラーメンライター。Yahoo!ニュース、東洋経済オンライン、AERA dot.など年間100本以上の記事を執筆。その他、テレビ番組出演・監修、イベントMCなどで活躍中。ミュージシャンとしてはサザンオールスターズのトリビュートバンド「井手隊長バンド」などで活動中。本の要約サービス フライヤー 執行役員、「読者が選ぶビジネス書グランプリ」事務局長も務める。著書に『できる人だけが知っている 「ここだけの話」を聞く技術』

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