日本に数多くあるラーメン店の中でも、屈指の名店と呼ばれる店がある。そんな名店と、名店店主が愛する一杯を紹介する本連載。埼玉で本格的な和歌山ラーメンを提供する店主が愛する一杯は、“手打式”の麺で圧倒的な個性を放つ名店の一杯だった。
■「また食べたい一杯」を目指し続けた埼玉の和歌山ラーメン
JR埼京線の戸田公園駅から徒歩5分。埼玉県戸田市の街に本格的な和歌山ラーメンが食べられる人気店がある。「麺屋あがら」だ。和歌山出身の店主・阪上晴郎さんが、地元のラーメンを都心に根付かせるべく奮闘している。
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「あがら」は、東京でも戦える和歌山ラーメンを目指した。和歌山の名店「うらしま」「しま彰」のような濃厚なラーメンをイメージし、豚骨が濃くて醤油の味がしっかり立つ一杯を作り上げていった。阪上さんはこう説明する。
「豚骨スープは2回濾すことで臭みが取れて、濃厚ながらくどくない綺麗なスープに仕上がります。醤油は和歌山の湯浅醤油を使っています」
和歌山県有田郡湯浅町は醤油醸造の発祥の地として、2017年に日本遺産認定もされた町でもある。樽でじっくり熟成した醤油は旨味が凝縮され、ほんのり甘みがあってまろやかになるという。この旨味が和歌山ラーメンの味を作り上げているのだ。阪上さんにとっては幼少期から食べている当たり前の味だったが、東京ではなかなか味わえないため、地元から離れて改めてその魅力に気づいたという。
寸胴のフタの締め方一つにもこだわり、「また食べたい一杯」を目指し続けた。オープン翌年の14年以降は日本最大級のラーメンイベント「東京ラーメンショー」に5年連続で出店し、そのたびに反響を呼んだ。
「ラーメンショーは大きな挑戦でした。和歌山代表として、ちゃんとしたものを作って和歌山ラーメン自体をしっかりアピールしなければと思いました。地元の職人さんたちにもたくさん褒められ、ほっとしましたね」(阪上さん)
和歌山ラーメンの美味しさを「あがら」で知ってもらい、実際に和歌山に足を運んでもらうことが阪上さんの願いでもある。そんな阪上さんが愛するお店は、東京都葛飾区亀有にある手打式中華そばの店だ。すべて手作りにこだわる唯一無二の一杯を提供する名店だ。