松野:そうですね。制度上の問題もあると思いますし、そもそも奨学金
の存在が知られていないことも大きな問題だと思っています。フルブライト奨学金など、大学院から海外大に留学する人向けの奨学金はある程度は充実し、認知もされているのですが、学部から留学する人向けの奨学金制度が充実してきたのはここ5、6年。奨学金の存在を知らないことで、「これだけお金がかかるのであれば行けないな」と断念してしまうケースも多いと思います。
松本:めっちゃ多い、そういう人。海外大進学は、私たちのように発信する人が増えていけば、志望する人も増えていくと思います。でも奨学金の枠は年々まったく一緒。となると、奨学金から漏れる人がどんどん増えてしまう。経済的な理由で留学ができないのは悲しいことだと思います。
アメリカは大学からもそれなりの奨学金を出してくれますが、私の場合、現地での生活費などを家庭から出すのが無理だとわかっていました。でもそれをカバーできる奨学金をもらおうとすると、選択肢が数えるほどしかない。結局、私たちは柳井の奨学金をもらいましたが、日本の国立大学に行くよりもお金がかからない。
松野:そうそう、ほぼゼロ円だよね。金銭的な問題があると、学校の先生が「この生徒はアメリカに向いているな」と思っても、そう簡単にすすめられないじゃないですか。柳井正財団の人も言っていましたが、奨学金の存在そのものをもっと周知する必要があると思いますね。
なぜこうした問題が解消されないかというと、単純にステークホルダーが少ないからだと思います。学部から留学する人は現状すごくマイノリティーですし、文部科学省としても、ほかの課題と優先順位をつけたときに、海外大進学の課題が上に来るかと言えば、来ないのだと思います。
松本:海外大がいろいろな人が目指せるものになったのはつい最近のことで、それこそ去年まで私たちのような人は全然いなかった。一部の高校生だけで完結してしまっていました。
松野:新しく財団を立ち上げようとしても、出さなきゃいけないお金がかなり膨大ということもあると思います。国として予算をつけようとしても、海外大進学の奨学金の額が大きすぎると「国内大学への進学に困っている人にお金を出すべき」という意見が来るので、あまり踏み込めないんじゃないかなと思っています。本当に難しい問題です。