中田カウス(写真/中西正男)
中田カウス(写真/中西正男)

 無観客と言っても、目の前にお客さんがいらっしゃらないだけで、配信先にはたくさんのお客さんが見てくださってるわけですから。

 しかも、配信やったら、こっちのネタに対して、リアルタイムでコメントをかき込んでもらえるじゃないですか。僕はね、そのコメントをチェックして「今、こんなことを書き込んでくれた人がいたけど……」と舞台に出て行くようにしています。これはね、新しい見せ方やし、そこで新たなお客さんとのつながりが生まれているわけですから。

 むしろ、すぐに意見が聞けるから僕は配信が好きだし、生の舞台ではないことがあるわけですから。プロならどんな状況でもやっていかなアカンし、そこで得るものはあるんです。こういう状況になって、酒を飲んでくさるか、何かに気づくか。大事なのはそれです。

 それとね、無観客での配信は力のあるなしがバレますよ。やっぱり、お客さんがいないとね、テンポが速くなるんです。覚えているセリフを互いに言ってるだけで終わらせてしまう。お客さんがいると間をとったり、呼吸をはかったりしやすいんです。でも、いなかったら、万引で捕まった中学生みたいに早口になりますよ(笑)。ネタが“言い訳”になるんやね。

 力があるかないかはね、こういう時に出るんですよ。ここでやれているコンビは、本当に力があるし、どこよりもネタ合わせをやっているコンビですよ。そして、細かい話ですけど、ネタの前ではなく、ネタが終わってからのネタ合わせをちゃんとやっている。そういうコンビはきちんとお客さんを想定しながらできている。目の前は無観客でも、実際、お客さんはいらっしゃるんですから。

 こんなことがあって、みんな劇場の意味、お客さんの意味をいま一度、考えたと思いますよ。実際、ここ数年を見ても、若手の劇場となる「よしもと漫才劇場」を作って、そこから「ミキ」や「霜降り明星」「見取り図」らが出てきました。

 みんな、漫才という本職で足腰を鍛えて世の中に出ているので、今、どれだけ忙しくなっても舞台を、漫才を大事にしてますよ。

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