中田カウス(写真/中西正男)
中田カウス(写真/中西正男)

 1967年に「中田カウス・ボタン」を結成し50年以上、漫才の最前線で戦ってきた中田カウスさん(71)。新型コロナ禍で劇場や舞台にも大きな影響が出ていますが、上方漫才協会会長という重責も担う中、今だからこそ見つめ直すべき劇場の意味。そして、芸人としての矜持を吐露しました。

【写真】いまだに「怪物」と称される吉本の大物芸人はこの人

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 大阪・なんばグランド花月(NGK)を筆頭に、吉本興業の劇場は連日満席で全国からたくさんの方がお越しになる。そんな状況が長く続いてきました。

 でもね、そんなことはいつまでも続かんやろと思ってました。いつか、何らかの形で、バタッとお客さんが来なくなることがある。これは前々から言ってきました。

 たくさんお客さんが来ていただく。これは本当にありがたいことです。ただ、たくさん来てくださったお客さんが立ち見になって、夏なんかはクーラーを入れていても劇場内が暑かったりもする。

 来てくださったお客さんに心底満足して帰ってもらっているのか。「大阪に来たら、絶対にNGKやで」と皆さんに思ってもらえているのか。そこは僕ら芸人も、スタッフも考えないとアカンところやと思いますよ。

 お客さんに来てもらうのは当たり前ではない。それを当たり前と思うことが一番怖いことです。いっぺんは、ビックリするようなことが起きるでと言ってきました。

 僕が吉本に入った五十数年前は、劇場にもほとんどお客さんが入ってなかった。お年を召したお客さんがポツポツ来てくださっているくらいで。逆に、いつも満席でにぎわっていた劇場がいつの間にかなくなっていくというのも見てきました。だからね、浮かれたらアカンねんやと。世の中は常に変化し、揺れ動く。

 なので、こういう新型コロナという形かどうかは分からんけど、何かしらの形で劇場に大きな変化があるだろうとは思ってました。

 劇場にお客さんに来ていただけない。その中で無観客での配信ということも始まりました。ところが、芸人の中でも配信を断ったり、無観客ではやらないとか言う芸人も出てきました。それはアマチュアですね。どんな状況でもやりきるというのがプロです。

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中西正男

中西正男

芸能記者。1974年、大阪府生まれ。立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当として、故桂米朝さんのインタビューなどお笑いを中心に取材にあたる。取材を通じて若手からベテランまで広く芸人との付き合いがある。2012年に同社を退社し、井上公造氏の事務所「KOZOクリエイターズ」に所属。「上沼・高田のクギズケ!」「す・またん!」(読売テレビ)、「キャッチ!」(中京テレビ)、「旬感LIVE とれたてっ!」(関西テレビ)、「松井愛のすこ~し愛して♡」(MBSラジオ)、「ウラのウラまで浦川です」(ABCラジオ)などに出演中。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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無観客こそ芸人の「力」が試される