中田カウス(写真/中西正男)
中田カウス(写真/中西正男)

 それで言うとね、僕は苦しまなアカンと思っています。毎日、生きた心地がしないのがこの世界ですよ。ホンマにね、生きた心地なんてしませんよ。売れるまでは「いつになったら売れるんやろう……」と思うし、売れたら「いつまで続くんやろう……」と思うしね。漫才やったら、自分が気を付けていても、相方にどんなことが起こるか分からないし。

 そして、そんな中でいつも考えておくのがお客さんのことですよ。それがプロです。芸人はね、家から一歩出たら、もう自分じゃないですから。人の喜びをもって自分の喜びとする存在ですから。常に、とにかく楽しんでもらう。

 だからね、よく“プライベート”なんて言葉を聞きますけど、プライベートなんてないよ。あるわけがない。いつからそんなことを言うようになったんやと思います(笑)。

 そして、若いということはとても大事なことです。若いお客さんに来てもらい、若い芸人を育てる。これがないと終わりますから。

 会社は新入社員のためにある。舞台は若手のためにある。それがホンマのことやし、できれば劇場にたくさん足を運んでもらって、若い人を育ててやってもらえたらありがたいばかりです。そのありがたみを、今はみんながより一層、かみしめていますので。

(文と写真・中西正男)

■中田カウス(なかた・かうす)
1949年6月29日生まれ。愛媛県出身。本名・野間勝道。中学卒業後、大阪に出て就職するが、退職し芸人の道を志す。67年に中田ボタンとコンビを結成。斬新なファッションセンスや若者受けするネタ作りなどでアイドル的な人気を得る。3回の上方漫才大賞など受賞多数。2002年から10年まで「M-1グランプリ」決勝戦の審査員を務めた。14年には「上方漫才協会」の会長に就任。よしもと漫才劇場を拠点とする若手を育てる役目も担っている。

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