イラスト:オカヤイヅミ
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 今年も年明けに書き下ろしの締め切りがあったので、元日だけ仕事を休んで、あとはずっと仕事をしていた。なので三年連続、おせちを注文したものの、去年もいまひとつで今年もいまひとつだった。

 おせちについては、味付けに糖分と塩分が多めになりがちなので、それらが控えめのものを頼んでいた。初めて注文したときは、なかなかおいしくいただいたのだが、二年目からそのおせちがなくなってしまった。そこでカタログの中で塩分を控えたり、糖質制限されていたりするものを選ぼうと思ったのだが、数多いおせちのなかに、それぞれ一種類ずつしかなかった。悩みに悩んだ結果、

「私には糖質制限が必要かも」

 と、糖質制限を謳ったおせちのほうを注文したのだった。

 大晦日に届き、蓋を開けてみた私は、

「あー、なるほどね」

 とうなずいた。糖質制限の意味は、料理の糖分も控えているのだろうが、糖質が少ない食品が詰めてあるということだったのだ。もちろんカタログを見ているので、どういう内容かは、いちおう把握していた。仕入れ状況によって、内容が変わる場合があるというのも承知している。今回はフレンチレストランが作ったと書いてあり、ふだんは和食ばかりなので正月くらいは洋風でもいいだろうと思ったのである。

 おせちの中に入っていたのは、牛肉、鴨肉、豚肉、太い手作りソーセージなどの肉類、サーモン、エビ、イカ、カニ、アワビ、ホタテなどの魚介類、そしてチーズ各種に、生クリーム系の乳製品、そしてフォアグラ。私はチーズは年に二回ほど食べるくらいで、好きというほどではない。モッツァレラチーズ、ゴーダチーズはわかるけれど、名前も知らないチーズが使われたおせちを見て、もう一度、

「あー」

 と力なくつぶやいた。そして、

「野菜はないのか、野菜は」

 と探してみたら、オマールエビの身の下に、サヤエンドウとブロッコリーのスープ煮に、マイクロトマトが散ったものと、その隣の仕切りの中に、ピクルスがあった。とにかく野菜よりも肉と乳製品の比重がとても多いおせちなのだった。

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