すっぽんの汁に焼いた四センチほどの長ねぎが入っていて、とてもいい香りが立っている。彼女は神奈川県の出身なので、餅は角餅なのだが、
「もらったお餅が丸かったから、今年は変則的なの」
といっていた。知り合いのお宅で搗いた餅が届いて、それが丸だったのだそうだ。高齢者の餅被害を考えると、そのほうがいいのかもしれない。最近の餅は伸びが悪く、昔のように噛んでも、びろーんと伸びなくなったが、この餅はちゃんと伸びる餅だった。そして餅自体に風味がある。餅網にくっついて困ったと彼女は嘆いていたが、餅の水分含有量が違うのだろうか。
おいしいすっぽんのお雑煮をいただきながら、典型的なおせちをつまんでいると、
「ああ、日本のお正月」
と思わずつぶやいてしまった。彼女に、
「おせち、どうだった?」
と聞かれたので、正直に内容を話すと、
「ああ、そうか。そういう中身だったのね」
と気の毒そうな顔をした。
「やっぱり日本の正月はこれだね。味がちょっとくらい濃くたって、それがいいのよね」
私はそういって気持ちを改めた。だいたい私が買ったおせちよりも、はるかに目の前のおせちのほうが見た目にも食べたくなるし、実際に塩分も糖分も制限していないはずなのに、おいしいのだ。
そしてその後はすき焼きが登場した。私はひとり暮らしなので、まずすき焼きはやらない。昔は会食で食べたりはしたが、今は老ネコがいるため、夜は外に出られないので、すき焼きから二十年以上遠ざかっている。
「砂糖は控えめにして、あまり甘くないようにしたから」
すき焼きは砂糖と割り下で甘辛い味付けにするが、私は料理が甘いのが苦手なので、砂糖が控えてあっても、まったく問題なく、かえって野菜も肉もするすると食べられて、おいしかった。何と豪華な正月よと思いながら食べ終わると、紅まどんな、いちご、りんごといった果物のお皿が登場した。
「そのりんご、冬恋って書いて、はるかっていう名前なんだって」