たしかに肉類、魚介類、乳製品は糖質が少ない。しかし私が想像していたのとは違っていた。クリームを生サーモンで巻き、イクラがのせてある料理は、クリームをとりのぞいて食べた。またまたおせちに関しては失敗した感があった。

 実は私はおせち料理を詰めるために、小ぶりな塗りの三段重をオーダーしてしまっていた。所有物の処分をし続けている人たちのなかで、食器、台所用品のなかでいちばん不要といわれている重箱を、私も所有物を処分し続けている最中だというのに、わざわざ注文したのである。それは購入したおせちを配送された器そのままで食べるのは、ちょっとと思い、詰め替えようとしたのだった。

 たしかに無駄かもしれないけれど、私も前期高齢者となったから、これから何回、おせちが食べられるかわからない。子供の頃はお年玉ももらえて、着物も着せてもらったり、家でゲームをしたりと楽しかったので、正月はめでたい気持ちがあったが、お年玉がもらえない年齢になると、正月はどうでもよくなった。

「ただ十二月三十一日から、一日経っただけじゃないか」

 と思って、学生のときはアルバイトに精を出していた。実家が地方にある子は帰ってしまうので人数の調達ができず、私のような実家が東京の学生に集中的に声がかけられたのだ。ふだんの日よりも時給が高くなるし、どうせ暇だし、ちょっとでもお小遣いのたしになるならと、一月二日からアルバイトをしていた記憶がある。就職するとまた正月はどうでもよくなって寝だめをする時期になった。ただ、都内が空いて空気がきれいになるのはうれしかった。

 しかしこの歳になると、正月を迎えられるのが、とても大切に思われるようになってきて、それが重箱購入につながったのである。

 塗りの重箱だったら、中身がどんな種類のおせちでも格好がつくので、洋風でもかまわないと考えていた。しかし、いざおせちの内容を見てみたら、私の苦手な乳製品がたくさん使われていたので、一気にやる気が失せ、

「今年はこのまましまおう」

 と重箱はそのまま棚の中に入れた。

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