本当はもうちょっとは大丈夫なのかもしれないが、おせちの賞味期限が一月一日までと表示してあったので、今日中に食べなくちゃと思っていたら、友だちからおせちを食べに来ないかとメールが来た。実家に行く予定だったのが、それが変更になり、お嬢さんと自宅に二人でいるという。うちの老ネコには申し訳なかったが、

「ちょっと買い物に行ってくるね」

 と断って、電車に乗って十分ほどの彼女の家に向かった。

 愛らしい美人のお嬢さんが迎えてくれ、

「どうぞ」

 と食卓に案内された。テーブルの上には有名な和食店のおせちのお重が置かれ、くわいや美しく四角にカットされた焼き魚、酢じめの魚、小ぶりな伊達巻き、かずのこ、金柑の甘煮などが、重箱を逆さにしても落ちないくらい、ぎっちぎちに詰まっていた。

(これがおせちだよなあ)

 と、うちのおせちを思い出していると、

「他にすっぽんのお雑煮と、あとですき焼きがあるから」

 と友だちがいう。

「ええっ、それは豪華版ね」

 私の今までの正月で、いちばんすごいラインナップかもしれないと驚いていると、お嬢さんが、

「先にこちらを食べましょう」

 と声をかけてくれたので、二人でおせちをつまんでいた。味付けはしっかりしていたが、やはりおいしい。私は病気で食事制限を受けているわけでもないのに、塩分だの糖質だのとおせちをそういった部分で選んだことをとても後悔した。おせちはこういった味付けでいいのである。隣の大皿には、鮨店から届いたという、かずのこ、豆きんとん、栗きんとん、かまぼこの類が並べられていた。そして彼女手作りの煮しめ。極端に野菜不足のうちのおせちを思い出しながら、

(煮しめくらい自分で作ればよかった)

 私はまた後悔した。

 すっぽんのお雑煮は、このおせちを購入した和食店のものを真似したものだという。

「お店だとおがもっと小さくて、お上品なんだけどね」

「すっぽんを自分で捌いたんじゃないよね」

「まさか。お店でやってくれたのよ」

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