2020/4/9(撮影:小澤太一)
2020/4/9(撮影:小澤太一)
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写真家・小澤太一さんの作品展「いつものいえ」が12月1日から東京・日本橋小伝馬町のRoonee 247 Fine Artsで開催される。小澤さんに聞いた。

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 これまで小澤さんはほぼ毎日、一人娘の姿を保育園の送り迎えの際に撮影し、その作品を「いつものみち」というタイトルで昨年、発表した。

 ところが、今年4月以降、状況が一変。保育園が新型コロナ感染予防のため、休園してしまったのだ(もしくは登園自粛を求められた)。

コロナ禍で自らに課した三つの撮影ルール

 小澤家では、「お母さんは仕事に行っているので、こりゃ、もう娘と2人で過ごすしかないなと」。

 外出自粛が強く求められるなか、気持ちが塞ぎ込んでしまう、「なんて気持ちはこれっぽっちもなかった」と、小澤さんは言う。むしろ「コロナのいまを撮りたい」と思った。そして、以下のような三つの撮影ルールを自らに課し、実行したのだ。

<其の壱:撮影範囲は家の中のみ(但し、マンションの屋上は家の中に含む)。其の弐:撮影はモノクロ限定。其の参:必ず1日1枚、SNSにアップする作品を作ること>(写真展案内から)

「なんか、ちょっと自虐的なゲームみたいにも思えますね」と、私が言うと、「やるなら、制約をたくさんつけたほうが面白い、と思ったんです(笑)。マンションの家の中で何ができるのか、というチャレンジ」。

 そのチャレンジの成果が今回の作品「いつものいえ」なのだ。

 小澤さんは「不幸中の幸いと言っていいかわからないですけれど」と前置きしつつ、こう語った。

「仕事がどんどんなくなり、ヒマにしてたので、それほど負担なく、娘の面倒をみられた。まあ、楽しく生活をしていこうかな、ということで動かしていったプロジェクトなんです」

2020/4/14(撮影:小澤太一)
2020/4/14(撮影:小澤太一)

「こんなに空気、重いの? これはいかん、うつるな」

 撮影した作品は自分のブログやFacebookに毎日、掲載した。

「みんなが『今日は感染者数が何人になりました』とか、深刻なことをSNSに書いているときに、『娘と遊んじゃいました』みたいな、『コロナの重い空気に関係なく撮ってますよ』というのを出すべきかな、と。いいものが撮れたら、じゃなくて、必ず出す。ともかく、自分のペースを自分でつくっていかなきゃ、ヤバい、と思って」

「自分のペースをつくる」ということは、結局は自分のために撮っていた、ということでは?

「たぶん、そうだと思います。いや、間違いなく。別にどこかで発表しようとか、打算があったわけはないんです」

 小澤さんが恐れたのは世間の重々しい空気に感染することだった。「けっこう長期戦になるかも」という雰囲気のなか、小澤さんは写真を撮ることで自分自身や家族を守るバリアを張ったのだと思った。

「それまでとは、ちょっと気持ちが違う。なんていうかな……最初のころ、重かったじゃないですか。公園をのぞいても誰もいない。SNSでまわりの状況とかを見ていると、『こんなに空気、重いの?』って、思っちゃって。こういうのは『うつるな』『これは、いかん』と思ったんです」

 同じ時間を過ごすなら、ふさぎ込んでいるよりも写真を撮ったほうが前向きだ。被写体は目の前にあるわけし、それを撮って、発信していこうと思った。

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志村けんさんが亡くなったころ