元朝日新聞記者でアフロヘア-がトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。
* * *
小田嶋隆さんが亡くなった。「時の権力者だけでなく、社会に対して舌鋒鋭く切り込む真のコラムニスト」(by日経ビジネス電子版の担当者)。私も愛読していた同版のコラムで更新が途絶えがちになっていたので案じてはいたのだ。でも本当にその時が来たら想像以上の衝撃だった。批判そのものが強烈な批判にさらされる現代において、批判行為から一歩も逃げないあまりにも貴重な存在だった。
毎回スゴイと思ったのは、小田嶋さんが自らに対する批判コメントからも目をそらさないことだった。その人たちに向かってガチンコでコラムを書いていた。揶揄もする。スルリとかわしもする。でも決して無視はしない。その、もはや芸域とも言える絶妙な距離感に毎回ニヤリとさせられた。それは私だけではなかったようで、訃報を知らせる記事のコメントには、アンチオダジマからも「考え方は相容れなかったがいつも楽しみだった」「感謝している」という文言が溢れていた。