周辺にラーメン店が少ないせいか、人が人を呼び、開店当初から地元のお客さんが多く集まるようになる。オープン時はワンオペだったので18~24時の夜帯のみの営業だったが、「昼もやってほしい」という意見が多く集まり、開店3カ月後には11時から営業するようになる。
「麺とスープの工程を考えると、夜だけの営業が理想だったかもしれませんが、お客さんの声に応える形で昼もオープンしました。1年間はワンオペで頑張ろうと決めていたのですが、思った以上に激務でしたね」(後藤さん)
1年後には社員を採用し、お店は軌道に乗っていく。幼少期から引っ越しを重ねた後藤さんには“地元”がないが、店で毎日地域の人と触れ合い、上大岡が地元になった。現在は5店舗を展開するが、その全てが神奈川県内。特に上大岡には3店舗を構え、地元のラーメンシーンを支え続けている。
「櫻井中華そば店」の櫻井さんは、後藤さんの背中を見ながら日々ラーメンに向き合っている。
「自分が独立に向けて資金を貯めている頃、『G麺7』はオープンしました。後藤さんが一人でラーメンに向き合っている姿に、“ラーメン職人”を見ました。何事も突き詰めている人で、神奈川の先頭を切って走る憧れの先輩です」(櫻井さん)
後藤さんも「櫻井中華そば店」のラーメンへのアプローチに注目している。
「横浜はいい店が多いですが、その中でも評価の高い店です。このスープには細麺かなと思うところを、いい意味で裏切ってきます。自家製麺で、あえて王道を外しながら作るアプローチは自分とも共通していて、食べていてうれしくなりました」(後藤さん)
王道を外しながら美味しさが引き立つラーメンを作るのは簡単ではない。奇をてらうわけではなく、店主が目指すラーメンを追求して行き着いた一杯。神奈川県の先頭を突っ走る2店のこれからにも注目していきたい。(ラーメンライター・井手隊長)
○井手隊長(いでたいちょう)/大学3年生からラーメンの食べ歩きを始めて19年。当時からノートに感想を書きため、現在はブログやSNS、ネット番組で情報を発信。イベントMCやコンテストの審査員、コメンテーターとしてメディアにも出演する。AERAオンラインで「ラーメン名店クロニクル」を連載中。Twitterは@idetaicho
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