王道を崩すラーメンに賛否両論が出ることはわかっていたが、絶対にハマる人がいると確信していた櫻井さん。さらにそれを自分独自の一杯にするために、人が使っていない食材を探した。その一つがシャモだ。
「ある日食べた焼き鳥の美味しさに感動して、すぐにそのシャモを取り寄せてスープにすると決めました。タレに使う醤油も特注です。どちらも個性が強いのですが、それを丼の中でうまくまとめあげるのが自分の仕事だと思っています」(櫻井さん)
ガラだけではなく丸鶏を使って旨味を厚くしたり、火入れしていない生揚げ醤油で香りも演出する。こだわりぬいたラーメンはファンを唸らせ、「櫻井中華そば店」は一気に人気店に上り詰めた。そんな櫻井さんが愛するのは、独立前に出会った一杯だ。その店で見た店主の仕事ぶりに、これぞ本物のラーメン職人だと唸らされたという。
■月商1000万のラーメン店を立ち上げて独立
京浜急行線の上大岡駅から徒歩8分、駅前からは離れた閑静な場所に一軒のラーメン店がある。店の名前は「G麺7(ジーメンセブン)」。一度聞いたら忘れられないその店名から、どんな変わったラーメンを出す店かと思いきや、じんわりと美味しいシンプルな一杯を提供している。09年のオープンから11年、いまや上大岡になくてはならない存在になった。
店主の後藤将友(まさとも)さん(48)は東京の板橋に生まれたが、親の仕事の関係で千葉、横浜と住まいを転々とする。昔から麺類が好きで、過去にはイタリアンや創作料理店でのアルバイトも経験した。将来について具体的に考えることなく飲食店での仕事を続けていたが、00年、友人から「ラーメン屋を一緒にやらないか」と誘いを受ける。後藤さんは当時をこう振り返る。
「ラーメンを作ったことがなかったので最初は驚きました。よく話を聞くとオープンを2年後に設定して、レシピや店作りの準備をしたいととても戦略的だったんです」
それならば、と後藤さんは日々ラーメンの食べ歩きをしながら、毎週日曜には赤坂にある中華料理店「海皇TOKYO」の厨房を借りてラーメンの味を研究をした。この時ラーメン作りを教えてくれたのが、総料理長の近藤幸弘さんだ。