各大学が趣向を凝らしたコンテストを実施している。崇城大学が主催する「つまようじ」を使ったユニークなコンテストもそのひとつ。高校生にとって大学との接点となり、入試へのアピールポイントにもなる。AERA 2022年7月11日号の記事を紹介する。
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細くそびえ立つタワーがグラグラと揺れる。その様子を、固唾をのんで見守る高校生たち。
「あぁ~。倒れちゃいました」
振動に耐えきれず、タワーが横にぱたりと倒れる。塔のてっぺんに載せるのは、1枚1キロの重り。それを支えているのは、なんとつまようじだ。
「つまようじと木工用ボンドだけで作ったタワーです。上に載せる重りを一枚ずつ増やし、振動を変化させていき、耐震性を競います。最後まで倒れなかったタワーが優勝です」
そう説明するのは、熊本県にある崇城大学入試課の松田建志さん。同大では、2006年から「つまようじタワー耐震コンテスト」を主催している。
年度によって規定は変わるが、普通科高校の場合、今年は高さ50センチ以上、重さ80グラムまでの「つまようじタワー」に重りを載せ、床に振動を与えて勝ち残りを競う。
もともとは建築学科の学生を対象に始まったコンテストだが、11年の東日本大震災を機に高校生部門も設立。津波や地震で倒壊した建物が大きな被害を与えている様子を目の当たりにし、建築や耐震構造に関心を持つ子どもたちが増えるのではないか、との思いがあったという。
仲間と試行錯誤してほしいと、コンテストには2人1組での参加が必須。多い年には、100組近いチームが出場する。組み立てたタワーを持ち込むため、熊本県近郊の学校がほとんどだが、工業科で学んだ生徒のほか、普通科や定時制、通信制高校と幅広い。
多くの高校生と接し、コンテストを重ねるなかで、建築学科を志望する受験生も増えていった。そうした現状に呼応するように、今年度から新たに導入したのが「探究活動アピール選抜」だ。入試の対象となるのは、探究活動や課題研究等に取り組んできた高校生たち。そのアピールポイントの一つとして、同コンテストも活用できる。
「学力で大学合格を目指す生徒がいるように、部活動や探究活動を頑張って目的を叶えたいと思う受験生がいてもいい。つまようじコンテストは、どのタワーが残るか最後までわからない、答えがないものです。そんな問いに向き合った生徒さんに、ぜひ入学してほしいと思っています」(松田さん)
同大では、ほかにも「サイエンスインターハイ@SOJO」「崇城大学ビジネスプランコンテスト」などの大学独自のコンテストを実施。それぞれの成果を入試で活用できるため、受験生の選択肢も広がっている。(編集部・福井しほ)
※AERA 2022年7月11日号より抜粋