会うたびに「こんな顔、してたっけ」とハッとさせられる。「自分でも最近、大人の顔になってきたなあと思います」(撮影/品田裕美)
会うたびに「こんな顔、してたっけ」とハッとさせられる。「自分でも最近、大人の顔になってきたなあと思います」(撮影/品田裕美)
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「麒麟がくる」の撮影現場で。門脇演じる駒は戦災孤児という設定だ。「駒は戦国という切迫感のある時代だからこそ、明るく生きていこうとする女の子。明るさのなかに切なさが表現できれば」(門脇)(撮影/品田裕美)
「麒麟がくる」の撮影現場で。門脇演じる駒は戦災孤児という設定だ。「駒は戦国という切迫感のある時代だからこそ、明るく生きていこうとする女の子。明るさのなかに切なさが表現できれば」(門脇)(撮影/品田裕美)
2月公演の舞台「ねじまき鳥クロニクル」で共演する成河と渡辺大知(写真手前)とダンスレッスン。「麦は“同志”ですね。勉強家だし、彼女から映画をたくさん教わりました」(成河)(撮影/品田裕美)
2月公演の舞台「ねじまき鳥クロニクル」で共演する成河と渡辺大知(写真手前)とダンスレッスン。「麦は“同志”ですね。勉強家だし、彼女から映画をたくさん教わりました」(成河)(撮影/品田裕美)
読書も好きだが実はアウトドア派。山や釣りによく出かける。でも写真は撮らない。「目で見るほうがいい。スマホの中身はほぼ乗換案内と台本の写メです」(門脇)(撮影/品田裕美)
読書も好きだが実はアウトドア派。山や釣りによく出かける。でも写真は撮らない。「目で見るほうがいい。スマホの中身はほぼ乗換案内と台本の写メです」(門脇)(撮影/品田裕美)

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 映画「愛の渦」で脚光を浴びた門脇麦は、1月19日からスタートするNHK大河ドラマ「麒麟がくる」のヒロインを演じる。小さいころからバレエを習い、稽古を重ねたが、やればやるほど自分の才能の限界が見えた。挫折を経てたどり着いたのが俳優だった。必要ならヌードも辞さず、自分を追い込み、役を作り上げていく。今、監督たちはこぞって門脇を起用したがる。

 12月のNHKスタジオ。門脇麦(かどわき・むぎ)(27)は大河ドラマ「麒麟(きりん)がくる」の収録現場にいた。15歳という設定ゆえか、前髪をちょんまげにしたおさげ姿。くっきりとした眉に、蜜柑(みかん)色の着物が愛らしい。

 セットの準備が進むあいだ、廊下のソファに「普通に」座っている。大河のヒロインなのに、まるで俳優然としたところがない。自然に、淡々と、一人でいる。そんな様子をスタッフや周囲の人々が、気持ちよく見守っているのがわかる。

 が、本番。「よーい、スタート!」の声がかかると、門脇はすん、と役に入っていく。演技の前にとった間(ま)と重要なセリフは、絞り出されるような切なさを内包し、あきらかに場をさらった。

 門脇は2014年の映画「愛の渦」で一躍、表舞台に躍り出た。劇団「ポツドール」主宰の三浦大輔(44)が自らの舞台を映像化した作品。乱交パーティーに集まった男女の会話劇で、地味だが実は性欲が強い女子大生という難役だ。全編123分中着衣シーンが18分30秒という衝撃もさることながら、内向的なヒロインが自らを解放していくさまを繊細な芝居と透明感をもって演じ、人々を驚嘆させた。

 15年にはNHK連続テレビ小説「まれ」でヒロインの友人役を演じ、強い印象を残す。16年には映画「二重生活」で単独初主演を果たし、「止められるか、俺たちを」「チワワちゃん」「さよならくちびる」など話題作に続々と主演。そして20年、大河ドラマ「麒麟がくる」のヒロインに抜擢(ばってき)された。

 門脇演じる駒は、主人公・明智光秀とひょんなことから関わる戦災孤児だ。チーフ・プロデューサーの落合将(51)は最初から門脇を想定していたと話す。17年にドラマ「悦ちゃん」で仕事をして以来、動向が気になって仕方がなかった。

「彼女は役柄によって、全然違う見え方をする。なぜか門脇麦が出ていると、普段はあまり観ない日本映画を観に行っちゃうんです」

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