さらにカメラテストで衝撃が走った。

「目で見る顔とカメラを通して見る表情がまったく違った。わかりやすく言うと、カメラ映えするんです。あの衝撃を超える女優には、いまだに出会っていない。この子は売れるな、と思った。僕じゃなくてもこりゃ誰かが気づくだろうな、って」

「愛の渦」の映画化を三浦に持ちかけた東映ビデオのシニアプロデューサー岡田真(57)は言う。

「三浦さんは役者の定型な芝居をはぎ取っていく人。役者が得意な型やクセを嫌い、ナチュラルさを求める。役者はみな、相当に疲弊するんです」

 しかし、まだ「型」を持っていなかった門脇は監督に言われるままに芝居をするしかなかった。それが功を奏したのかもしれない。撮影期間も短くハードな現場だったが、日に日に成長する門脇に、三浦は何も言わなくなった。「彼女の表情を追っていれば、この映画はなんとかなる」。実際、そのとおりになった。とはいえ、俳優として色がつく危険性もあったのではないか。畠中は言う。

「作品のクオリティーの高さと女優の姿勢と品。それがあれば絶対にうまくいく。私が手掛けたなかで品が悪くなったり、ヘンな色がついた女優は一人もいません。でも現場で女優たちは間違いなく心の中で血を流している。その覚悟から生まれた表現だから、尊いんです」

 得たものは大きかったと、門脇も言う。

「私が求めている人とのつながりは、みんなでひとつの作品に向かっていて、口にはしなくても絶対的に燃えているものを共有することなんだな、とわかったんです。映画という場所を、私は求めていたんだ、って」

 何かを探し、もがき続けた青春時代を取り戻すように、門脇は走り出した。

 数々のオファーに応え、映画やドラマ、舞台へと活躍を続けた。だが同時に、どこかに違和感がこびりついてもいた。

「『愛の渦』で評価していただいたのは嬉しいけれど、チャレンジングなことをした私に対しての評価でもあると感じていた。演技力とか実力ではなく物事が進んでしまっている、と。どの現場でも『私なんかでごめんなさい』と思っていました」

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