2020年1月4日、毎年恒例の東京ドームでのメインイベントは夏のG1クライマックスを制した飯伏幸太との対戦に決定。オカダが勝てば5日のメインイベントにも出場。ハードな戦いだが「どちらも勝つ」と宣言(撮影/加藤夏子)
2020年1月4日、毎年恒例の東京ドームでのメインイベントは夏のG1クライマックスを制した飯伏幸太との対戦に決定。オカダが勝てば5日のメインイベントにも出場。ハードな戦いだが「どちらも勝つ」と宣言(撮影/加藤夏子)

 このように新日本プロレス人気は国内に留まらない。19年4月、ニューヨークにあるエンターテインメントの聖地と言われる「マディソン・スクエア・ガーデン(MSG)」で興行を行ったところ、1万6534枚のチケットはほんの16分で売り切れ、同会場の史上最速記録を打ち立てた。

 観客の9割が外国人。それでも選手の入場テーマ曲のイントロだけで誰か分かり、大きな歓声が上がる。メインイベントはオカダ対ジェイ・ホワイト。当時、タイトルを失っていたオカダが、王者のホワイトに挑戦。激しい攻防の末オカダがタイトルを奪取した瞬間、観客は総立ちになりオカダと同じレインメーカーポーズを取った。海外試合が多いオカダはMSGは格別だったと語る。

「控室には、これまで公演を行ったビリー・ジョエルとか世界の著名アーティストの写真がずらりと飾られていた。今、自分はこの人たちと同じ場所にいると思い感慨深かったし、花道の入り口から会場を見渡した時、歴史の重みみたいなものを感じ『おーっ、すげえ!』と思わず口に出てしまいました。リング上から、会場が一つになって興奮する様子を見た時は、プロレスは難なく国境を超えると確信して、自分の自信にもなりましたね」

 今や絶対的な王者として君臨するオカダだが、1度だけプロレスを続けるかどうか悩んだことがある。17年、ベルトに挑んできた柴田勝頼(40)を激闘の末に下したが、柴田は控室で突然倒れ、硬膜下血腫で開頭手術を受けた。オカダはプロレスそのものが怖くなったという。柴田に申し訳ない気持ちも抑えきれず、先輩たちを訪ね歩いた。

「先輩たちには『不慮の事故。お前は悪くない』と言われましたが、人を傷つけてしまいかねないプロレスをやる意味があるのか、そして柴田さんに申し訳ない気持ちが溢れ出し、その度にどれだけ泣いたか。そんな僕を救ってくれたのは、病院で見せてくれた柴田さんの笑顔でした」

 それから2年後の19年3月、柴田はオカダが出場するニュージャパンカップのテレビ放送席にいた。オカダは勝利すると、カップを放送席の柴田の元に届け、人目も憚らず大泣きした。

「この2年間、柴田さんのことはずっと頭にありました。でも解説席で元気な姿を見せてもらい、おまけに『ニューヨーク(MSG)に応援に行くから頑張れよ』と言っていただき、感情が切れてしまったんです。帰りの花道でも泣いていました。安堵の涙でしたね」

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