プロレス界に“金の雨を降らせた男”は大の釣り好き。船舶免許も取得し、時間が許す限り湖面に浮かぶ(撮影/加藤夏子)
プロレス界に“金の雨を降らせた男”は大の釣り好き。船舶免許も取得し、時間が許す限り湖面に浮かぶ(撮影/加藤夏子)
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 191センチの長身から繰り出されるオカダ・カズチカの技は、とにかく迫力があった。お札が舞う派手なパフォーマンスも魅せる。チケットは、ほぼ完売。つい数年前まで、プロレスが不況にあえいでいたことが嘘のようだ。女子の人気も高い。2020年1月4日には東京ドームで、飯伏幸太と対戦する。どんな戦いになるのか、ファンが固唾をのむ。
 
 冷たい雨が降りしきる10月中旬、東京の両国国技館は常夏のような熱気に覆われていた。会場をぎっしり埋めた観衆の吐き出す歓声が、場内の空気を激しくスピンさせている。眩い照明に浮かぶリング上の選手の一挙手一投足に呼応し、野太い声、黄色い歓声、子どもたちの甲高い声が激しく飛び交っていた。
 
 プロレス人気が凄い、とは聞いていた。だが、これほどまでとは――。
 
 1万人収容の会場は、目算で男性5割、女性4割、子ども1割。カップルやグループが多く、家族連れも目立つ。この試合は新日本プロレスが主催する年間約150試合の一つだが、IWGPヘビー級選手権など幾つかのタイトルマッチが組まれていたことから、大きな注目を集めていた。
 
 第1試合から会場は盛り上がり、試合が進むにつれボルテージは増していく。その興奮がマックスに達したのは、メインイベントのIWGPへビー級王者オカダ・カズチカ(32)の名前がコールされた時だった。リングアナウンサーの声がかき消されるほどの「オカダコール」が沸き上がる。
 
 191センチの長身に孔雀が羽を広げたような豪華なガウンを纏い、自分の顔がプリントされた大量の紙幣が宙を舞う中、オカダは金剛力士のような風情でリングに向かった。彼のニックネームである「レインメーカー(カネの雨を降らす男)」を地で行くような演出だった。
 
 オカダに挑戦するのは、夏のG1クライマックスでオカダを下したSANADA(31)。身体を極限までに鍛え上げた100キロ超の2人の身体能力は高く、SANADAがオカダを両手で高く掲げマットに突き落としたと思えば、オカダがSANADAの頭までスタンディングジャンプし、空中飛び蹴りを食らわす。

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