基本的にはインドア派。休日は部屋にこもってドラマや映画を見まくる。読書家でもあり、「人体」などの興味ある分野の専門書を片っ端から読んだりもする(撮影/岡田晃奈)

 全国各地のホールをともに回ってきたツアーマネジャーの岩政順(51)が言う。

「プレミアムライブはお客さんとものすごく距離が近い。曲によっては目の前でお客さんが泣いたりしている。お客さんの感覚が直に伝わってくるんです。それだけに一曲一曲の歌をどう表現しようかと考えていたのがよくわかった。でも、その感覚が、大ホールでずっとやってきた中島美嘉をまた大きくしている気がします。これから歌を歌っていく上でひとつの武器になるということをこのツアーでつかんだんだと思います」

 一方、プライベートでも大きな変化があった。14年末に結婚したバレーボール日本代表選手との3年余の生活に終止符を打ったのだ。

「誰も信じないけど、円満離婚なのは間違いないんです。特にものすごい喧嘩(けんか)をしてとかではなく。別れたあとも会いましたしね。一番の原因は、私の性格上、専業主婦になれなかったということです。遠距離で支えきれなかったのも悪かった。やっぱり私は、働いていたかったし」

 先のミュージカル「イノサン」の初日終了後、こんなことがあった。

 観客が引いたあと、漫画『イノサン』を担当する編集者の綱島圭介(43)に対して、「あのセリフの意味はわかりましたか」「あの場面の登場の仕方で伝わりましたか」「人物の解釈はあれでよかったですか」と中島が矢継ぎ早に質問を繰り出したのだ。ゲネプロを含め1日2回の舞台を終えて疲労困憊(こんぱい)しているはずなのに、俯瞰(ふかん)してその日の舞台の出来を執拗に問うていた。その真摯な姿勢からは、一演者というよりも、座長としての意欲と責任感がにじみ出ていた。

 歌や演技だけでなく、ヘアメイク、ファッション、言葉、絵画と、いくつもの表現手段を持つ中島には、実は裏方志向もある。

「もし、いま裏方にまわっていいと言われたら、はい、もう喜んでという感じです。たまに、表に出て何かやってといわれればやらせていただくにせよ、メインは裏で大丈夫。詞はもちろん、ライブの構成、この企画にはこの人を起用して、この漫画を原作にして映画を、とか。そういうことを考えているとわくわくする」

 しかし、そう言うそばから、長らく中島を支え続けてきたソニー・ミュージックの鈴木有美(45)が「できれば私たちは、表現者としてずっと表舞台に立ち続けてほしい。それで救われている人も実際多いし、誰でもできる仕事じゃないですから」とクギを刺した。

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