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2001年、ドラマ「傷だらけのラブソング」で主役に抜擢、主題歌「STARS」を歌えば大ヒットを記録。まるで物語の世界のようなデビューを果たした中島美嘉は、その後も「雪の華」や映画「NANA」などヒットを飛ばす。しかしその裏で、耳の違和感に苦しんでいた。うまく歌えない。悩み抜いた果てに再び歩き出した中島は、新たな強さを手に入れた。
デビューから18年、中島美嘉(なかしま・みか)(36)はその間、一度としてミュージカルや芝居の舞台に立ってこなかった。「自信がなく、怖かった」からだ。何百回となく経験しているライブでも、いまなお本番前には緊張で震える中島にとって、それは大きな難関だった。
しかし、2019年11月29日、中島は、東京・有楽町の「ヒューリックホール東京」で、900人の観客を前に、ついに初めてとなる舞台に挑戦した。しかも、座長として。
演目は、死刑執行人の一家「サンソン家」を描いた漫画『イノサン』(原作・坂本眞一)をミュージカル化した「イノサン musicale」(脚本・横内謙介/演出・宮本亞門)。フランス革命前後の18世紀に実在した一族だが、中島は、その中で唯一フィクションとして描かれた女性死刑執行人マリー-ジョセフ・サンソンを演じた。
中島が初めての舞台に挑んでみようと思ったのは、死刑と革命をテーマにしたこの物語と主人公のマリーに共鳴したからだった。
「『サンソン家』の小説は昔に読んでいたし、『イノサン』が出たときもコミックで全巻一度に買ったぐらい興味がありました。死刑に興味があると言うとちょっと変だけど、自分の中では、人間の怒りとか悲しみ、苦しみみたいなものを深く知りたい、えぐりたいといつも思っていたから」
中島が演じるマリーは、クールかつ残酷で、その言動は露悪的だ。が、裏では、誰よりも人の痛みを感じ、罪悪感さえも隠し持っている死刑執行人である。原作者の坂本が中島と初めて言葉を交わしたとき、「マリーが目の前に現れた、本当にいるんだという感覚に襲われた」というぐらいのはまり役だった。