ただ、焦点距離で異なる特性を、面倒と捉えるか特徴と捉えるかで機材選択も変わってくる。つまり、ボケ効果よりも手前から奥までピントの合った写真を作りたい場合はマイクロフォーサーズやAPS-C機が有利であり、35ミリの画角でも、できるだけ浅い被写界深度を利用してポートレートやテーブルフォト撮影を行いたいのなら35ミリフルサイズやミドルフォーマットのカメラを選択するほうがいい。
とくにスナップショットなど、一瞬の動きをとらえ、手前から奥まで主題の周囲も鮮鋭に描写したいという場合は被写界深度の深いマイクロフォーサーズやAPS-C機を使うほうが有利になる。
フォーマットを変えることで画質が変化するのではと気にする人、期待する人は少なからずいる。フォーマットの大きさの違いによる画質の差はないとは言わないし、画素数や、設定、ISO感度にも関連する。単に画質だけを追求するならば大きなフォーマットのほうが確実に有利なことは否めない。
だがいまは極端な高感度設定を行ったり、画面の一部分を大きくトリミングしたりなどという目的がない限りは、フォーマットの大きさの違いからくる画質の優劣を気にする必要はなくなってきている。
むしろ、自身の撮影スタイルやモチーフ、撮影条件に予測がつくのなら、それに適したフォーマットのカメラを選択するほうが撮影効率はいいし、表現の幅を広げることができる。
ね、きちんとカメラを買う理由ができました。そのほうがフォーマットが異なるカメラをたくさん買うことができて楽しめるじゃないですか。
いささか脱線したが、同じ35ミリの画角でもフォーマットサイズを意識するだけで写真の雰囲気を大きく変えることができるわけだ。(撮影・解説=赤城耕一)
※「アサヒカメラ」2020年5月号より抜粋。
本誌では、代表的なレンズを網羅した「35ミリレンズ・現行品ラインアップ」のリストや「ライカレンズに見る35ミリ単焦点レンズの世界」などの記事も掲載。35ミリレンズの魅力を12ページにわたって特集しています。