私のようなズボラな人間にとっても35ミリレンズは理想だ。本音はレンズ交換が面倒だからである。前述のとおり、アングルや絞りを工夫することで、描写を変えることができれば被写体を選ぶことなく使用できるのだ。これは肉眼そのものではないか。
アサインメントでも自分で気をつけていないと全てのカットを35ミリで撮影してしまいそうになる。さすがにそれでは変化がつかないから無理にでもレンズを交換する。ならばズームレンズを使えばいいではないかと思われるだろう。はい、アサインメントではズームレンズを積極的に使います。でもね、プライベートでの撮影でズームレンズを持つと、不必要な焦点距離のレンズを抱き合わせで持たされているような気になる。
フォーマットの対角線の距離と同等の数字を標準レンズの焦点距離と定めるという定義がある。この場合35ミリフルサイズだと43ミリ相当になる。ほら、35ミリレンズに近づいてきましたよ。
土門拳は同著で「カメラを購入する時についてくる50ミリレンズを新品のうちに売り飛ばして35ミリに付け替えろ」と発言している。私は素直だからこれに従ったにすぎないのだ。
現在レンズ交換式のデジタルカメラのフォーマットの大きさは、一般的にはマイクロフォーサーズ、APS-C、35ミリフルサイズ、44×33のミドルフォーマットである。
フォーマットの大きさが異なれば、同じ画角のレンズでも、レンズの焦点距離が異なることは説明する必要もなかろう。「35ミリ判換算画角」でフォーマットごとに35ミリレンズと同じ画角になるレンズの焦点距離で表すと、マイクロフォーサーズは17~17.5ミリ、APS-Cは23~24ミリ、44×33では44~45ミリ相当になる。
レンズの焦点距離は短いほうが被写界深度が深く、長いほうが浅くなるから、同じ35ミリの画角の写真でも被写界深度が大きく異なる。