私のようなズボラな人間にとっても35ミリレンズは理想だ。本音はレンズ交換が面倒だからである。前述のとおり、アングルや絞りを工夫することで、描写を変えることができれば被写体を選ぶことなく使用できるのだ。これは肉眼そのものではないか。

 アサインメントでも自分で気をつけていないと全てのカットを35ミリで撮影してしまいそうになる。さすがにそれでは変化がつかないから無理にでもレンズを交換する。ならばズームレンズを使えばいいではないかと思われるだろう。はい、アサインメントではズームレンズを積極的に使います。でもね、プライベートでの撮影でズームレンズを持つと、不必要な焦点距離のレンズを抱き合わせで持たされているような気になる。

開放F値1.8の明るさで重量約280グラムと小型・軽量。ミラーレス用のレンズの特性か最短撮影距離0.22メートル、最大撮影倍率0.24倍と簡易マクロレンズといっても過言ではない能力。絞りを開くと標準レンズ系マクロレンズと見分けがつかない美しい描写をする■ソニーα7 III・ISO200・絞り開放・AE(撮影/赤城耕一)
開放F値1.8の明るさで重量約280グラムと小型・軽量。ミラーレス用のレンズの特性か最短撮影距離0.22メートル、最大撮影倍率0.24倍と簡易マクロレンズといっても過言ではない能力。絞りを開くと標準レンズ系マクロレンズと見分けがつかない美しい描写をする■ソニーα7 III・ISO200・絞り開放・AE(撮影/赤城耕一)

 フォーマットの対角線の距離と同等の数字を標準レンズの焦点距離と定めるという定義がある。この場合35ミリフルサイズだと43ミリ相当になる。ほら、35ミリレンズに近づいてきましたよ。

 土門拳は同著で「カメラを購入する時についてくる50ミリレンズを新品のうちに売り飛ばして35ミリに付け替えろ」と発言している。私は素直だからこれに従ったにすぎないのだ。

 現在レンズ交換式のデジタルカメラのフォーマットの大きさは、一般的にはマイクロフォーサーズ、APS-C、35ミリフルサイズ、44×33のミドルフォーマットである。

 フォーマットの大きさが異なれば、同じ画角のレンズでも、レンズの焦点距離が異なることは説明する必要もなかろう。「35ミリ判換算画角」でフォーマットごとに35ミリレンズと同じ画角になるレンズの焦点距離で表すと、マイクロフォーサーズは17~17.5ミリ、APS-Cは23~24ミリ、44×33では44~45ミリ相当になる。

35ミリは、これまでの写真生活でもっとも多用してきたレンズ。画角、被写界深度、ボケの大きさは撮影前に予想がつくので、呼吸をするように撮影できる。平凡な写真ができてしまう危険もあるけど、絞りの選択、撮影距離、アングルで多様な写真を作ることができる■キヤノンEOS R・ISO800・絞りf2.8・AE・+0.7補正(撮影/赤城耕一)
35ミリは、これまでの写真生活でもっとも多用してきたレンズ。画角、被写界深度、ボケの大きさは撮影前に予想がつくので、呼吸をするように撮影できる。平凡な写真ができてしまう危険もあるけど、絞りの選択、撮影距離、アングルで多様な写真を作ることができる■キヤノンEOS R・ISO800・絞りf2.8・AE・+0.7補正(撮影/赤城耕一)

 レンズの焦点距離は短いほうが被写界深度が深く、長いほうが浅くなるから、同じ35ミリの画角の写真でも被写界深度が大きく異なる。

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