いい写真を撮るためには、自分の足で被写体を探す必要がある。有名な撮影ポイントは万人に知られているから、それを横並びで写しても高い評価が得られないのは仕方がない。 特に、車で行ける有名なスポットで撮影した作品は、それがたとえ絶景でも、ほかの人と同じにしかならない。
歩くから、新しい写真の発見があるのだ。「アサヒカメラ」2020年5月号では、「写真は足で撮れ!」をテーマに特集を展開。人気と実力を兼ね備えた風景写真家の、秦 達夫さん、深澤 武さん、福田健太郎さんの3人が、車道を離れ、自分の足で歩いて撮影することの大切さを熱く語っている。
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秦:「足で撮る」といっても、もちろん車は使いますよ。みなさんもそういう撮り方をしているんじゃないかと思うんですが。
福田:車っていうのは移動の手段だからね。
深澤:ぼくも行けるところまでは車で行きたい。(笑)
福田:そもそも俺と秦さんの師匠、竹内(敏信)は車をフルに使って撮っていたわけじゃないですか。その姿を俺らはそばで見ていたわけですよ。
秦:同じ風景写真家でも大阪の高田誠三先生は「とにかく歩くんだ」みたいなことを言っていたとか。だから「歩きの高田、車の竹内」って、特に関西では言われていると聞いたことがあります。撮影スタイルの違いをからめて二人の作品が語られていた、ということなんでしょうね。
福田:確かに師匠は「よーし、ここでとめるか」と言って、車からパッと出て撮ることも多かったけれど、100%じゃないよね。少なくとも半分くらいは歩いていた。
秦:ええ、歩いていましたよ。
福田:アマチュアの人からすればパパッと撮っておしまい、というイメージがあるかもしれないけれど、自分の足で移動していた。
深澤:滝なんかは、すごいところで撮っていましたからね。
福田:そう、滝とか森とか1時間くらい歩いたりしたし。みなさんが思うほど師匠はお気楽な撮影はしてなかった。
秦:つまり「車から降りてそこで撮るスタイル」と、「車から降りて歩いて撮るスタイル」がある。どちらにしても車を使うけれど、歩かないで車道からしか撮らないというのとはぜんぜん違う。そこはきちんと区別しないと。
福田:そうだよね。われわれは車から見えるところからパパッと撮るんじゃなくて、自分の足で自然の中に深く分け入って撮る。というのは、写真が趣味じゃない人にも自然のすばらしさを伝えたいから。撮影地に向かう途中のアプローチに車を使うか、使わないか、というのはぜんぜん違う話。
秦:それを理解してもらうことは大事なんじゃないかな。
福田:それがわかると、風景との向き合い方も変わるんじゃないかな。ちなみに俺はほとんど知らないんだけど、車で行ける有名な撮影地とかあるよね。長野県とか、車道にずらっと三脚が並ぶところがあるじゃない。
秦:志賀高原、渋峠。
深澤:高ボッチ高原とか。
秦:標高2千メートル前後で、風景に奥行きがあって雲海が出たりする。
福田:車道から絶景が撮れちゃうんだ。
秦:そうそう、そういういいところ。