深澤:でも、「この場所に行けば、これが撮れる」というイメージがすぐに思い浮かぶような写真が多いですね。

福田:つまり、そこで撮っている多くの人にとっては、そのイメージが「ゴール」なんだろうね。もう出来上がったイメージ、頭の中で見えているものがあるわけじゃない。だから、パッと撮って、カメラの背面モニターを見て、それが撮れていたら満足して終わり。ある意味、潔い撮り方というか。それで100%満たされてしまうから新しいものを探そうという必要性がないんだろうね。そもそも、俺の写真にはそういうゴールはないんだよ。「こういうものを撮ろう」とか、「ここに行けばこれが撮れる」というのがない。たぶん、秦さんも深澤さんもそうだと思うんだけれど、その時々の出合いで心を動かされたもの、心ひかれたものをキャッチしながら撮っていく。それが満足感につながっている。

深澤:最初にイメージがないほうが撮りやすいですか?

福田:俺の性分として絶景スポットとか、有名な場所に行くといやがおうにも風景に撮らされちゃう、ということもあるわけですよ。

深澤:確かにそういう写真を見ていると撮りづらいですね。

福田:意識していないつもりでもやっぱりあるんだよね、脳裏にこびりついていることが。

深澤:同じようには撮るまいと思いますものね。

「最初に6×6でモノクロでやりたいと思って、屋久島に通ったんです。いろいろな試行錯誤をしていくなかで、ここにたどり着いた。この島の気配みたいなものを写したい」撮影:秦達夫■ゼンザブロニカGS-1・ゼンザノンPG50ミリF4.5・ネオパン100 ACROS・絞りf16・2秒
「最初に6×6でモノクロでやりたいと思って、屋久島に通ったんです。いろいろな試行錯誤をしていくなかで、ここにたどり着いた。この島の気配みたいなものを写したい」撮影:秦達夫■ゼンザブロニカGS-1・ゼンザノンPG50ミリF4.5・ネオパン100 ACROS・絞りf16・2秒

福田:撮るまいとは思っていても、結局、「風景に撮らされちゃったな」というふうなことが、すごく後悔っていうのかな、残念だな、と思っていて。ゼロからスタートできる、ニュートラルな気持ちで被写体と向き合えるところで撮りたいという気持ちがある。だからこそ車から降りて歩いていく。

深澤:よく日本の山は撮り尽くされたって言われますけれど、それでもやっぱり登山口に車をとめて山に入ると新鮮に感じる被写体って多いですよ。やっぱり、車で行けないところは圧倒的に発表されている写真の数が少ないですから。こんなところにこんな風景があるんだとか、こんな花が咲いているんだとか、いろいろな発見がある。だから興味がある山には撮れるかわからなくてもとりあえず行ってみる。ぼくはそういうやり方が好きですね。

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