深澤:グループで行くような人たちにはそういう感じがありますね。
福田:有名になるくらいだから、やっぱりそこの風景は魅力的なんだろうし、それをほかの人と同じように撮ってみたいという願望もわかる。ただ、俺にとっては、ひとりで静かに歩くことで気持ちが自然と落ち着くし、精神を開放して風景と向き合うことがなによりも面白い。ささやかな発見や出合いが自分にとっての絶景だから。
秦:屋久島に「蛇紋杉」というのがあって、倒木なんですけれど、ヤクスギランドの奥、遊歩道を歩いて1.5キロくらいのところにある。でも、行けば撮るか、といったら、撮らない。ただ、好きで見に行くだけ。「ああ、蛇紋杉を見たな」と。そこでぼーっとしたりして。また別のところに行ったり。その道中で何かを見つけられるというか、出合えるものがあったらいいかな、くらいの感じ。屋久島に限らず、撮影のときはいくつかポイントを決めて、まずはそこに向かうんです。そこに行く途中で何かを発見する。で、「あっ」と思ったところに車をとめて、歩いて行ったりする。ぼく、車というのは風景を写すにはめちゃくちゃ有効な道具だと思っていて、例えば、いまの太陽の位置だったら、東側より西側に行ったほうがいいとか。向こう側の谷に回り込むことで劇的に違う光で撮れるとか。光源の太陽はひとつしかないから、自由にストロボの位置を変えてモデルを撮る、みたいにはいかないから。
深澤:同じ場所に通って、どういう気象条件のときにどういう風景が見られるのかを研究するにも車は便利な道具だと思いますね。例えば、その場所ではどんなときに雲海が出るのかをつかむ。うまく見られなくても車で行けばショックは少ないですから。