こう話すのはイライザ代表取締役CEOの曽根岡侑也さん。AIの自然言語処理分野は2017年末時点では、人間のほうが圧倒的に優勢で実用的ではなかったが翌18年に革命が起きた。
Googleが発表した大規模言語AI「BERT」の登場だ。19年6月には言語理解の精度を測るスコアで人間の精度を超えた。現代文のテストでAIが人間の正答率を上回ったと言い換えればわかりやすい。
イライザも独自に大規模言語AIを開発し、“人間超え”を果たしている。これまでのAIから何が変わったのか。
「これまでは、この文字の並びのときはこれが正解、というふうに言語を暗号として暗記するような形でした。大規模言語AIではまず大量の文章を読み込ませ、文法を事前学習させて、言語を理解させるのです」(曽根岡さん)
言語の本をたくさん読んだり、ニュース番組を見たりといった、より人間らしいアプローチをしているのだという。見上げたものである。人間らしくなればなるほど、記者の立つ瀬はなくなる。
ただ、まだ“弱点”はある。時間をかけて推敲に推敲を重ね、無味乾燥ではない血の通った文章を書く。これは人だからできることだ。
そんな折に知ったのが東京・高円寺にある「原稿執筆カフェ」。締め切りに追われる者しか立ち入ることが許されない書き手にとっての聖地(?)だ。入店時に作業目標を告げ、その目標が達成されない限り店を出ることはかなわぬという、恐怖の館である。
高円寺駅から高架沿いに東へ5分ほど。いざ、入店。
元々はイタリアンバーだったという店内には、レンガ造りの壁にカウンター席が並び、テーブル席、テラス席含め全13席。オレンジの間接照明によるほどよい明るさで、落ち着いた雰囲気だ。話し声などは当然聞こえず、静か。執筆を始めている先客からは、タイピング音が止まることなく聞こえてくる。(お前もひたすらに書くのだ)と、心の声が重圧を告げる。