売り主として名前が記載されているのは、Falcon Holding特定目的会社。だが、特定目的会社は資産を扱うために設立される組織であり、事業会社としての実体はない。実際、連絡先は港区の法律事務所となっている。

 一方、開発の中心である事業企画に携わるのは、BPEA Real Estateだ。アジア系の投資会社であるBaring Private Equity Asia(ベアリング・プライベート・エクイティ・アジア)の不動産部門である。外資系企業が中心の事業であることから、香港など海外の富裕層が販売ターゲットだとみられている。

 また、媒介・販売には三井不動産グループの仲介会社である、三井不動産リアルティが加わる。同社は、国内富裕層のネットワークに強いとされる。

 外資ファンドが主導する国内超高額物件という、実に「イケイケ」の様相を呈するマンションではあるが、そんなマンションを見学する予定という貴重な富裕層の一人に話を聞いたところ、返ってきたのは意外な言葉だった。

「立地が悪い。売り主は外資系企業なので狙いは海外の富裕層だと思うが、彼らが好きなのは皇居周辺や六本木など『分かりやすい』ランドマーク。別荘目的なら原宿は微妙だし、投資目的でこんな値段の物件を買うばかはいないでしょ。となると、正直販売は苦戦すると思う。ただ、いくら勝手が分からない外資とはいえ、これだけ高価格なら普通買い手は事前に決まっていると思いますけどね」

 実際の販売状況やターゲット、事業企画の経緯を聞くべく各社に取材を申し込んだ。

 だが、事業企画のベアリングは「MARQ OMOTESANDO ONEの件につきましては、現段階では回答を控えさせて頂いております。また状況が変わりましたら弊社よりアナウンスをする予定でございます」とのこと。

 媒介の三井不動産リアルティは、「媒介という立場なので、こちらから何かを伝える権利がありません。また、個別の契約については、回答を差し控えています」との返答だった。

 前出の富裕層は、「メディアに対して情報を漏らさないようにしているのは、物件の内容が外に出るとブランドが安く見られ、買い手である富裕層の心証が悪くなるからではないか」という。

 庶民には到底手が届かない世界だが、67億円物件の登場は富裕層にまで広がるマンション局地バブルを象徴しているようだ。

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