「天命だと感じた」という日比谷音楽祭の当日朝。公園各所での催しに声をかけて回った(撮影/門間新弥)
「天命だと感じた」という日比谷音楽祭の当日朝。公園各所での催しに声をかけて回った(撮影/門間新弥)
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 6月の晴れた空の下、日比谷音楽祭が2日間にわたって開催された。きっと、この日を一番楽しみにしていたのが、亀田誠治だろう。音楽祭の実行委員長をつとめた亀田は、誰もがフリーで参加できるようにと、自ら資金調達のため企業をまわり、準備をしてきた。音楽文化を日本に根付かせたい。音楽の魅力をもっと伝えたい。音楽祭はその一歩。亀田の目は100年先を見つめる。

 芝生に座っていた亀田誠治(かめだ・せいじ)(55)は、人懐っこい笑顔で手を振った。

「どうです? いい感じでしょう?」

 初夏の日比谷公園。見回すと、のんびりとした空気が広がっている。子どもたちから老夫婦まで、ふらりと訪れた様々な人たちが憩いの時間を過ごしている。開放感あふれるムードの中、広場に設けられたステージに世界的に活躍するバイオリニストの金子飛鳥とピアニストの林正樹が登場した。卓越した演奏を繰り広げると、亀田は大きな拍手でそれを讃え、次の場所へと向かっていった。

 6月1日、2日の2日間にわたって、日比谷公園では亀田が実行委員長をつとめた「日比谷音楽祭」が開催された。今年が初となるフェスティバルのコンセプトは「フリーで誰もが参加できる、ボーダーレスな音楽祭」。公園各所でコンサートやワークショップやトークイベントが行われ、全てに無料で参加できることが大きな特徴だ。メインステージの日比谷野外大音楽堂(野音)では、石川さゆり、布袋寅泰、ナオト・インティライミ、JUJU、KREVAなど世代やジャンルを超えた豪華なアーティストが出演し、同志社大学のビッグバンドの演奏にシークレットゲストとして椎名林檎と宮本浩次が登場するサプライズもあった。

 亀田は2日間をせわしなく過ごしていた。朝から会場各地を飛び回り、トークイベントの聞き手をつとめ、楽屋ではゲストを歓待する。小音楽堂で行われたミュージカル俳優の井上芳雄らによるコンサート、警視庁音楽隊や東京消防庁音楽隊による吹奏楽の演奏、日比谷図書文化館で行われた琵琶や尺八や箏(こと)のワークショップ、広場で開催されたギターやドラムやアコーディオンなど各種楽器の体験コーナー等々、様々な催しを見て回った。野音で行われたコンサートではベーシストとしてバンドを率い、ステージに立った。

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