多忙な日々の中、リハーサルは本番直前まで続いた。布袋寅泰は代表曲「BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY」と石川さゆりとのコラボ「天城越え」を披露(撮影/門間新弥)
多忙な日々の中、リハーサルは本番直前まで続いた。布袋寅泰は代表曲「BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY」と石川さゆりとのコラボ「天城越え」を披露(撮影/門間新弥)

「テーマとして掲げてきた『親子3世代』が、野音のコンサートだけでなく、日比谷公園全体で達成できた手ごたえがあります」
 
■資金集めの企業まわり、初めてスーツを買った

 イベントが終了した翌日に55歳の誕生日を迎えた亀田は、上気した口調で感慨を語った。

「楽器体験コーナーでお年寄りがウクレレを弾いたり、小さな子どもがハーモニカを吹いたり、家族連れがドラムを叩いたりしていた。見知らぬ子ども同士が電子ピアノでセッションを始めたのも見ました。そういう光景を見ることができたのが、何より嬉しかったです」

 亀田は日本のポップミュージックを支える音楽プロデューサーの第一人者だ。これまで、椎名林檎、平井堅、スピッツ、GLAY、いきものがかりなど、数々のアーティストの作品を手掛け、たくさんのヒット曲を世に送り出してきた。

 こうした実績から、約2年前、日比谷公園側からイベントプロデュースの依頼が届いた。即答で引き受けた亀田がこだわったのが、無料のフリーイベントとしてフェスを運営することだった。

「一番大事なのは音楽が生活の中に根付くということです。これが日本と欧米との圧倒的な差。僕は数年前から毎年ニューヨークに通っているんですが、ニューヨークのセントラルパークでは初夏から秋にかけて『サマーステージ』というフリーコンサートが毎晩のように行われ、日常の風景になっている。大御所も新人も幅広く出演し、ポップスからクラシックまで多種多様な演奏が無料で楽しめる。それを見て、成熟した音楽文化というのはこういうことだと強く感じたんです」

 ニューヨークのサマーステージのように、東京にも人々が気軽に音楽を楽しめる場所を作りたい。その思いが亀田を駆り立てた。

「クラシックでもミュージカルでもジャズでもロックでも、どんなジャンルでもかまわない。世代を超えて愛される音楽が共有される場を作りたい。音楽が文化として根付くというのは、CDが何枚売れたかとか、どれだけヒットしたかとか、そういうことじゃないんだと思ったんですね」

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