マクロ的には変化なく
コロナ禍は少なからず女性のキャリア観、結婚観に変化をもたらしたように見える。これを機に、今後、晩婚化や未婚化に歯止めはかかるのだろうか。
厚生労働省の調査によると、婚姻件数(21年1~12月速報の累計)では約51万4千組と戦後最少を記録した。
「婚活」という言葉の生みの親であり、『新型格差社会』(朝日新書)などの著書がある中央大学文学部教授(家族社会学)の山田昌弘さんは次のように指摘する。
「婚活サービスの利用者増加やリモートワークによる結婚後の生活の多様化が結婚観や婚姻件数に大きな変化を与えるとは考えにくい。親と同居している人は結婚して独立すると生活の質が著しく落ちる。この経済状況が根本的に変わらない限り、マクロ的に見れば、結婚適齢期の4分の3は結婚し、4分の1は親と同居したまま取り残される状況は今後も続くでしょう。むしろ収入などのデータ優先の婚活アプリによって、取り残される層は最初からはじかれる。昨今は女性の収入を当てにする男性も増えたので、それは男女とも当てはまる傾向です」
かくも結婚離れの根は深い。婚活サービスやリモートワークが、結婚離れの歯止めとなるわけではなさそうだ。
さらに新たな課題も浮かび上がる。他人との接触が制限され、新しい人間関係を築く機会が失われた「コロナ世代」の恋愛離れが加速すると予想されているのだ。
前出の植草さんによれば、「恋愛経験がないまま婚活を始め、相手とのコミュニケーションがうまくいかず苦戦するケースも増えている」という。
コロナ禍で「そうだ、結婚しよう」と突然思い立ち、結婚相談所に入会した20代前半の女性。結婚相談所のカウンセリングはリモートではなく、毎回対面を希望し、わざわざ出向いている。
「カウンセリングでお見合い相手とのコミュニケーションの取り方などを教えてもらうことで、『社会の中で生きているという実感がわく』と言っていました」(植草さん)
職場で学ぶはずの人間関係や社会。それをうかがい知る場が、この女性にとっては「婚活」。こうした変化もコロナ禍特有といえるだろう。
(ライター・安楽由紀子)
※AERA 2022年7月4日号より抜粋
>>【前編】コロナ禍の婚活最前線 「結婚はまだまだ」と考えていた層が相談所に入会する背景は