「中華料理の延長では、ラーメンを作れない」　高級中華出身の店主が求めた「インパクト」への挑戦

 　得意な豚骨魚介を提供して売り上げを安定させつつ、塩ラーメンを磨き続けた。その後、『TRYラーメン大賞』の新人塩部門の3位に掲載され、風向きが変わった。お客さんが増えると同時に気持ちに余裕もできて、限定ラーメンにもチャレンジしていった。

「中華料理の延長としてラーメンを作っていては、やっていけません。ラーメン屋はラーメン一杯で勝負しなくてはならないからです。コースのように前の料理からの流れは作れないので、一杯だけでインパクトを残さなくてはいけない。複雑なスープにしてインパクトを残すためには、圧倒的な種類の材料と量が必要なんです。スープ作りは失敗しては作り直し、徐々に完成に近づけて今があります」（初谷さん）

　高級中華の技術を使いながらラーメンらしいラーメンを作り上げ、塩ラーメンの名店になった「瑞山」。これからもその味を磨き続ける。

 「麺や 河野」の河野店主は、初谷さんの器用さに一目置いている。

「デビューが同時期ということもあり、注目しています。お店が中村橋にあった頃、一度食べに来てくれて、その頃からのつながりです。『瑞山』の塩ラーメンは角がなくてあっさりとしたのど越し。毎日でも食べられるおいしさです。初谷さんには負のオーラが全くなく、これと決めたらやり抜く行動力が魅力ですね」（河野さん）

　初谷さんも河野さんのラーメンのファンだ。

「オープン当時、練馬に住んでいて、近かったということもあり、食べに行きました。『七彩』イズムを真面目に受け継いだ良いラーメンを出されていますね。武骨に続けていてすごいなと思います。質問もいっぱいしてくれるしとても勉強熱心な方です」（初谷さん）

　流行に左右されないあっさりした清湯系のラーメンで長く店を続ける2人。互いが刺激となり、これからさらにいいラーメンが生まれていくだろう。（ラーメンライター・井手隊長）

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