王道の醤油や豚骨ではなく、しじみをラーメンのスープに選んだのは、関西で食べたしじみラーメンの味が忘れられなかったから。「ほん田」の系列店「夏海(なつみ)」の限定ラーメン「しじみラーメン」をヒントに味づくりをして完成させた。
しじみの仕入先にもこだわった。いくつかの候補の中から、力強いダシがラーメンに向いていると島根県の宍道湖産を採用。岩田さんが何度も交渉を繰り返した結果、価格・品質ともに申し分のない仕入先を見つけることができ、しじみラーメンを一緒に盛り上げてくれるパートナーとなった。味づくりにも自信がつき、思いきって店名に「宍道湖しじみ中華蕎麦」と入れた。島根県出身というわけではないが、宍道湖のしじみに絞ることにした。
しじみというと味噌汁のイメージが強く、一般的にはラーメンと結びつきづらい。周囲には大丈夫かと心配されたが、知り合いの有名店主たちの応援もあり、徐々に口コミが広がっていく。しじみのヘルシーなイメージもあって、家族連れや年配のお客さんもたくさん食べに来てくれた。
岩田さんが一番意識したのはラーメンを食べた後の“余韻”だという。お店を出てから帰り道にじわじわとしじみの風味を感じながら帰ってほしいという思いだ。今後はこのラーメンを通じて、宍道湖の名前も広めていきたいという。
「琥珀」がここまで注目が集めた背景には、昨今の「貝だしラーメン」ブームがある。
桑名産のハマグリをふんだんに使ったスープが特徴の新宿御苑前の「SOBAHOUSE 金色不如帰」が「ミシュランガイド東京2019」で一つ星を獲得。さらに、銀座などに展開する「むぎとオリーブ」もハマグリを使ったラーメンで大ブレークしたのち、ミシュランガイドでビブグルマンを獲得した(17年)。大阪でも「ストライク軒」「人類みな麺類」「醤油と貝と麺そして人と夢」など、貝だしの人気店が数多くあり、貝だしラーメンは一定の人気を保ち続けるとともに、ここ数年プチブームになっていた。