「どんな食材でもラーメンに合わせられると思っています。これまでの経験をラーメンに落とし込み、次から次へと限定麺を作ることで我々も飽きませんし、次のアイデアにつながる。常連さんも楽しんでくれているので、続けています。食べることの基本は『楽しさ』ですから」(黒木さん)
これまで100種以上の限定麺を作ってきた。「くろ喜」のラーメンには、黒木さんの料理人としての歴史とプライドが詰まっている。
「やまぐち」の山口さんは、黒木さんの技術に感嘆する。
「自分にないものを持っているので憧れの存在ですね。和食の技術と知識がしっかり丼に表れています。独特なワールドが個性にもなっていますし、大好きなお店ですね」(山口さん)
黒木さんは、山口さんのラーメンはラーメン好きだからこそできた一杯だと評価する。
「鶏に特化して、見た目にも美しいラーメンを作られていますが、ただオシャレなだけではない。しっかり“ラーメン”として仕上がっているんですよね。まさにラーメン好きが作った一杯だと思います。山口さんのラーメン作りは自作から始まっていることもあり、自分には思いつかないアイデアを見せてくれるんです。鶏の胸肉に葛粉をまぶして煮るという発想も、石川県金沢市の郷土料理の治部煮的でとても面白かった。本当に勉強になります」(黒木さん)
自作ラーメンの世界からプロになった山口さんと、和食を極めてからラーメンの世界に転身した黒木さん。ラーメンへの入り口は対極だが、お互いに惹かれるものがある。やはりラーメンの間口の広さは計り知れない。(ラーメンライター・井手隊長)
※「くろ喜」の「喜」は「七」を三つ並べたものです。
○井手隊長(いでたいちょう)/大学3年生からラーメンの食べ歩きを始めて18年。当時からノートに感想を書きため、現在はブログやSNS、ネット番組で情報を発信。イベントMCやコンテストの審査員、コメンテーターとしてメディアにも出演する。
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