●なぜ、お湯でなく、水か?
ちなみに、このマヨネーズの授業でもう一つ印象的だったのが、マヨネーズのついたボウルはお湯ではなく、水で洗ったほうがいいということでした。
マヨネーズは油の分子を水分でくるんだような構造になっているので、お湯で洗ってしまうと、中の油分が溶けだしてぬるっとしてしまいますが、水で洗うとさらっと流すことができるのです。
市販のものはどうしても味が濃かったり、飽きてしまったりしてしまいますが、たまには手作りで作ってみるのも新鮮でおいしいですし、酢や油を自分好みのものを使っていろいろ試してみるのも楽しいです。
ぜひ試してみてください。
詳細なレシピは本書にありますのでぜひつくってみてください。
●【志麻さんからのメッセージ】ゆっくりと楽しく食事をする時間が増えてくれれば嬉しいです
はじめまして。タサン志麻と申します。
このたび、『厨房から台所へ――志麻さんの思い出レシピ31』を出版させていただきました。
日本では、食事の前に「いただきます」、最後に「ごちそうさまでした」と言います。
フランスだと、料理をつくった人やサービスする人が食べる人に向かって「bon appetit(ボナペティ)」と言い、言われた人は「merci(メルシー)」と答えます。
どんな意味かというと、「どうぞ食べてください」とか、「食事を楽しんでください」というようなニュアンスです。
フランス人と食事をすると、食べることを楽しんでいるなと実感します。
でも、食べているものは、意外にも質素なものが多いのです。
一方で、三ツ星レストランの料理のように洗練された華やかな面もあります。
日本の調理師学校で初めてフランス料理に出会った私は、そんな意外な二面性を知り、どんどん惹き込まれていきました。
どんなに一生懸命、時間をかけておいしい料理をつくっても、食べる人が楽しんでくれなければ、おいしさは半減してしまう。
逆に言うと、簡単につくったものでも、楽しく食べることができれば、その食事は体だけでなく、心も豊かにしてくれるものになると思うのです。
長い間、フランス料理を勉強してきて、料理だけではなく、そんなフランス人の姿をたくさんの人に知ってほしいと思っていました。
ここまでの道のりは、決してまっすぐなものではなく、親にも友達にも自分のやっていることを言えない時期もありました。
今、こうして本を書いている姿は、5年前の私には想像もできませんでした。
フランスのあたたかい家庭料理のおかげで前に歩き進むことができ、たくさんの人との出会いのおかげで、自分の夢に近づくことができました。
フランス料理の料理人と家政婦。
言葉だけ聞くと、ものすごくギャップがあるように思いますが、料理に対する想いは変わっていません。
この本には、そんな私の半生と、いろんな仕事を通して学んだ料理のコツが書かれています。
文中には、私の思い出が詰まった31のレシピをとじ込めました。
「母の手づくり餃子」「けんちょう(山口の郷土料理)」などのおふくろの味から、フランス料理のメインディッシュ「舌平目(したびらめ)のデュグレレ風」「子羊のナヴァラン」「フランスのママン直伝のキッシュ」、簡単でおいしいデザート「龍馬チョコレート」「クロカンブッシュ」「自然薯パンケーキ」、1歳の息子お気に入りの「鶏手羽元のポトフ」まで、うまくできるコツとともに紹介しました。