だが、ラビューは全く違うと松本さんは言う。
「これまでの流線形とは異なる、まるで葉巻のようなフォルムを実現した。正面のガラスは球面に仕上げ、巨大なイモムシのようにも見える。この先頭部だけでも、これまでの鉄道車両の概念とはまったく違う」
今、鉄道界は斬新なデザインの電車の登場に沸いている。共通するのが「丸~い顔」だ。

東京メトロの丸ノ内線に2月23日にデビューしたばかりの新型車両「2000系」も「丸顔」だ。丸みと立体感のあるデザインには何とも愛嬌がある。
<映えるしエモいし>
ネットでは、早くからそんな言葉が飛び交っていた。
ラビューと同様、大胆に曲面ガラスを使っており、東京メトロでは初。デザインの原案は社内から声が上がったという。
「社内の若手を中心とした部門横断ワーキングで丸ノ内線のイメージを出し合った際、路線名から連想される『丸い』というイメージが多く挙げられ、それらの意見をデザインとして反映しています」(東京メトロ)
二つの「丸い顔」を実現させた立役者が、ガラス大手のAGC(旧旭硝子)だ。両車両の特徴的な曲面は、AGCの技術なしに実現しなかった。

AGCは50年に及ぶ鉄道向けガラスの歴史を持ち、新幹線の運転席などで使われる曲面合わせガラスを製造してきた。ただ、半径1.5メートルでほぼ球面というラビューのガラスは、同社にとっても前代未聞の難問だった。
同社のオートモーティブカンパニーアジア事業本部IMグループリーダーの大東英幸さんはこう話す。
「曲げが深くなったり、三次元曲面になったりすると生じやすくなるしわや歪みをどう抑えるか。炉内の温度分布、温度プロファイル……。微妙ですが、それらをコントロールして完成させた。ノウハウの蓄積です」
京都には、顔が「楕円」の電車も走っている。昨年3月から叡山電鉄が運行する観光電車「ひえい」だ。