
「0」のような楕円形を前面にあしらったその顔は、一度見たら忘れられない存在感。デザインは、叡山電車の二つの終着点にある比叡山と鞍馬山の神秘性をイメージしたという。
「徹底的に楕円にこだわり、車内のスタンションポール(縦の手すり)を曲線にすることで車両の前から後ろへ楕円が突き抜けているようなイメージとし、時空を超えるタイムトンネルを演出しています」(叡山電鉄)
前出の松本さんは、鉄道会社が電車に「丸」や「楕円」を好んで採用する背景には、「優しさ」があると見る。移動手段としての鉄道は「質より量」の時代は終わり、「量より質」を提供、あるいはそれを模索する時代になった。質を高めるために「優しさ」が期待されるようになったという。
「優しさの象徴として、鉄道車両であまり使われなかった球面というフォルムが具現化された。優しさを突き詰めたところから発生した新たなムーブメント。今の、そしてこれからの日本の鉄道に求められる流れだ」
(編集部・野村昌二)
※AERA 2019年3月11日号