【西武鉄道・Laview】先頭の大きな三次元曲面ガラスと、巨大な客室窓が特徴(撮影/写真部・大野洋介)
【西武鉄道・Laview】先頭の大きな三次元曲面ガラスと、巨大な客室窓が特徴(撮影/写真部・大野洋介)
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 斬新なデザインの電車の登場に沸く鉄道界。共通するのは「丸~い顔」。なぜ今、電車は丸いのか。背景には加工技術の進歩と各社の戦略があった。

【写真】乗客の足元まで届きそうな大きな客室窓。Laviewの車内はこちら

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<いやーそのオーラがはんぱないわ>

 今、そんな熱いつぶやきがツイッターなどSNSに続々と投稿されている電車がある。西武鉄道が25年ぶりに開発した新型特急「Laview(ラビュー)」だ。3月16日、池袋線と西武秩父線にデビューする。

 銀ピカのボディーに、乗客の足元まで届きそうな大きな客室窓。そして丸みを帯びた……というより、まん丸な先頭。昨年から始まった試運転の様子が、「撮り鉄」たちによって次々とSNSにアップされている。

 試運転中のラビューをツイッターに投稿した鉄道好きの男性(32)は、デビューが待ち遠しくて仕方がない。

「移動ではなく乗ること自体が目的となる電車が、西武にもようやく現れてくれた。山間を縫って走る西武秩父線で、ひざ下まで広がる窓ガラスからの眺望がどのように見えるのか楽しみ」

【西武鉄道・Laview】車内のシートは西武カラーの「黄色」だ。内観・外観ともに「いままでに見たことのない新しい車両を目指しました」(西武鉄道)(撮影/写真部・大野洋介)
【西武鉄道・Laview】車内のシートは西武カラーの「黄色」だ。内観・外観ともに「いままでに見たことのない新しい車両を目指しました」(西武鉄道)(撮影/写真部・大野洋介)

 客室窓は縦1.35メートル、横1.58メートル。側窓としてこの大きさを連続的に使うのは「国内初」(西武鉄道)という。

「Laview」は、贅沢(Luxury)なリビング(Living)のような空間の「L」と、眺望を意味する「view」をくっつけた造語。1969年以来、観光や通勤で活躍してきた特急「レッドアロー号」の後継車だが、伝統の赤い帯は引き継がなかった。

 デザインを担当したのは、建築界のノーベル賞といわれる「プリツカー賞」を受賞した世界的建築家の妹島和世さん。妹島さんはデザインコンセプトの一つに「都市や自然の中で、やわらかく風景に溶け込む特急」を掲げた。

 鉄道ジャーナリストの松本典久さんは、絶賛する。

「ラビューは鉄道車両の概念を打ち破った」

 従来の特急用車両の外観は空気抵抗を減らし、スピード感を演出するため、くさび形のデザインが大半だ。連結器を先端に配置して、そこから屋根までを直線や曲線でつなぐ。各社はその角度や意匠で個性を演出しており、たとえば歴代の新幹線もその流れだ。

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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