フィギュアスケートのグランプリ(GP)ファイナルが12月8~11日に開かれた。GPシリーズ(全6戦)の上位選手が競った大会で日本勢が存在感を示した。AERA 2022年12月26日号の記事から、男子シングルの試合状況を紹介する。
* * *
イタリア・トリノで開かれた今季前半の世界一決定戦、GPファイナル。宇野昌磨(25)はフリーで5本の4回転を着氷すると、世界王者の風格を漂わせる滑りで会場を引き込んだ。フィニッシュポーズから、思わず氷にペタンと座り込み、一転してあどけない笑顔に。その目線の先には、ステファン・ランビエルコーチの姿があった。
「今、僕がスケートをしている要因の一つは、周りの方々が喜んでくれること。ステファンの(2006年五輪で銀メダルを取った)第二の故郷で成績を残せたことがうれしいです」
改めて自分の信条を確認する試合だった。昨季に五輪メダルと世界王者のタイトルを手にし、今季の心理をこう語る。
「僕の年、今までやってきたこと、区切り的には今年辞めてもおかしくない。でも僕が続けているのは、成績を残したいからではなく、成長の余地があるから。そして皆が喜んでくれるから。何のためにスケートをするのかが変わってきています」
■皆さんが喜んでくれた
現地入りしてからは好調を維持。ショートプログラム(SP)は、2本の4回転を降りると、99.99点をマークした。好演技ながら100点台に乗らず、冷静に分析した。
「ジャンプは練習通り、ステップ、スピンは練習不足が出てレベルを取りこぼしました。フリーは本当にたくさん練習してきたので、練習が試合という場でどう出るか、自分を知るための大会になります」
自信を見せた通り、フリーは4回転5本を着氷し、204.47点をマーク。合計304.46点で圧巻の優勝だった。
「僕が想像していた以上に、コーチやスタッフの方のほうが緊張していました。それだけ『世界一』の大会へ思いがあったということ。僕にとっては一つの試合。皆さんが喜んでくれたことがうれしかったです」