取材の過程で筆者は警視庁成城署捜査本部が作成した捜査報告書や警視庁が全国の警察署に極秘で配布した事件の捜査ポイントをまとめたDVDなどを入手。それらを紐解くと、現場となった室内の数十数所から指紋、血痕など犯人に直結する物証が多く残されていた。
「犯人は渦状紋とよばれる特殊な指紋の持ち主で、血液型はA型。自身で持ち込んだ包丁で宮澤さんら4人を惨殺した際、手を切ってバンドエイドなどで止血した形跡があり、血の付いた指紋、血痕を多く残していた。犯行後は台所の冷蔵庫を物色し、ペットボトルのお茶をラッパ飲みしたり、スプーンを使わず、手でアイスクリームのカップ状容器を握りつぶして中身を押し、むさぼり食べるなど異様な行動をしていた。犯人は宮澤さん宅の2階の居間に自分が着ていたトレーナー、手袋、マフラー、ヒップバッグなどを残したまま、逃走。証拠を残さない“プロ”の手口とは明らかに違う」(捜査本部に在籍した元捜査員)
犯行時刻、一階にいたみきおさんは起きており、電気がついていたとされる。一階の電気は110番通報を受けた警察が到着するまでつけっぱなしになっていたからだ。
「単なるドロボーなら明かりのついた家に侵入しないはず。宮澤さん宅には計19万2千円の現金とポンド、ドルなど約5000円分の外国貨幣が残されていた。犯人は最初から宮澤さん宅を狙った可能性があった」(同前)
宮澤さん宅1階は、みきおさんの事務所兼にいなちゃん、礼君の学習室になっており、その奥には備えつけの納戸、階段があった。
みきおさんがうつぶせで倒れていたのは階段下だ。
4人の遺体検案書によると、解剖時、胃の中には30日午後7~8時ごろ、夕飯に食べたとみられる肉片、ニンジン片、茸片、緑色及び白色菜片、米飯、しらたきなどが混ざった液状の内容物が残留していた。
このため、死亡推定時刻は同日午後11時半頃とされた。
2階の台所のガス台に載っていた土鍋の中には鶏肉、白米、ニンジン、緑色菜片、卵が入った雑炊があり、4人が夕食の鍋をつついた後、殺害されたことを物語っていた。