<母系のミトコンドリアは、「アンダーソンH15型(イタリア、クロアチアなど地中海側の地域を示す)」、父系の染色体は韓国、台湾、中国、日本人を含むアジア民族に多くみられる「O3e*(オースリーイースター)」と判明。つまり、犯人は欧州人とアジア人のハーフ(混血)か、クオーターである可能性が高い>
実はこの犯人像と符号合する遺留品が多く見つかっていた。
犯人はフランスのギ・ラロッシュ社の香水「ドラッカーノワール」をふりかけ、日本では珍しい韓国製の運動靴「スラセンジャー」を履いていた。そして残されたヒップバッグの底から採取された砂は国内ではなく、米国の砂漠の砂である可能性が高かった。
捜査本部は方針を大転換し、世田谷区役所などを訪ね、「住民にハーフがいないか、調べさせてくれ」と依頼。さらに現場周辺の聞き込みから、フランス系のハーフの20代男性が容疑者として浮上し、捜査本部が色めき立つ場面もあった。
「この男性は宮澤さん一家と面識があった可能性が高く、フランスへ渡航して以降、帰国した形跡はなかった。母親のDNAを調べたところ、残念ながら、一致しなかった。他にもハーフ男性のDNAを調べたが、一致する人物は浮上せず、捜査を指揮した幹部が退職した後、尻すぼみとなった」(前出の元捜査一課幹部)
数年前から元成城警察署長の土田猛氏や世田谷区の地元の有志たちが《犯人のDNA型について 父系がアジア系民族、母系に欧州系が含まれる 「混血の日本人」である可能性も視野に入れて捜査している》と記した情報提供を求めるビラを配り始めた。すると捜査一課幹部から抗議があったという。
「多くのメディアがすでにDNA鑑定の結果を報じ、ウイキペディアにも出ているのに、捜査本部は頑なに発表しようとしない。このままでは目撃情報をいくら集めてもミスリードし、解決はとても無理だと思った。それで混血の日本人の可能性を明記したビラ配りを今でも続けています」
こう訴えるのは、土田元成城署長だ。宮澤夫妻と一緒に「宙の会」を結成し、千歳烏山駅で今もそのビラを節子さんと一緒に配り続けている。
18年もの歳月を費やしながらなぜ、捜査はここまで難航したのか。
事件発生時、現場に駆け付けた捜査一課元幹部によると、「現場は宝(物証)の山で、解決はそう遠くないと誰もが思った」という。