「その後、犯人はいったん、ロフトの梯を下り、2階の台所にあった洋包丁を取りに行った。この隙に泰子さんは傷口から血を流しながら、にいなちゃんを抱え、ロフトの梯子を下り、逃げようとした。梯子の周囲には泰子さんの血が真っすぐ滴り落ちた痕が多数、残っていた。これに気付いた犯人が阻止しようと洋包丁でトドメを刺したと思われます」(警視庁捜査一課元捜査員)
最後まで生きていたのはにいなちゃんとされる。泰子さんの体内から流れ出てゼラチン状に凝固した血の海の中で、正座したような格好のまま、うつぶせで死亡していた。
にいなちゃんの死因は「後頭部刺創による頸髄損傷」となっているが、解剖所見では頭蓋骨に硬膜下出血、外傷性くも膜下出血の跡があること、上顎左から1本目と下顎右から3本目の歯がそれぞれ欠損していたことが記されていた。硬膜、くも膜下出血は生存中でなければ、血腫が鮮明に現れない。
それゆえに、これらの傷跡はまだ生存中、犯人から逃れようとしたにいなちゃんが殴打されるなどして歯を折られたことを物語っていた。
さらに犯人はにいなちゃんの首の後ろから洋包丁で頸髄、甲状腺、食道までを貫き、殺害したとみられている。
そして礼君は2階の子供部屋のベッドの上でうつぶせのまま、死亡していた。
礼君の死因は「頸部圧迫による窒息死」で、その首筋には左側に3点、右側に1点の内出血痕があったことが捜査報告書には記されていた。
これは犯人が右手とその指を使って気道を圧迫し、扼死させたことを示している。現場の状況から礼君が最初に殺害された可能性が高いというが、なぜ、一人だけ扼殺だったのか、未だに謎は解かれていない。
犯人の異様さは殺害後の行動にも表れていた。