ここ数年で発達障害について、知られるようになった。しかし、差別を感じることもまだまだあるという。
「子どもたちを見ていると、小学校低学年ぐらいまでは凸凹のある子に対しても『あの子はいつもそうだよ』と当たり前のように受け入れています。それが大きくなると大人たちの偏見によって、差別する子が出てきたりするんです。"障害"というと重く受け止めたり、手伝ってあげなきゃと考えたりすることもあると思いますが、個性として認識してほしいなと思っています。
誰しも新しい職場で緊張して、慣れるまで時間がかかりますが、それが人より長かったり、丁寧な説明が必要だったりするので、それによって困るシーンが出てくるだけなんです」
凸凹ある子たちがいやすいように環境を整えていことは、実は多くのメリットがあると加藤さんは言う。
例えば、ある公立小学校では、黒板の脇にある時間割や掲示物を、授業中だけカーテンで隠すようにしたところ、クラスみんなが授業に集中できるようになった。加藤さんの息子が通った学校でも、教師が授業中に机の上をプロジェクターで映し、教科書のページやノートの起き方などを目で見てわかるようにしたら、座って授業を受けられるようになり、減らしていた宿題も「みんなと同じ量をやる」と言うようになったという。
いままさに子育てに悩んでいる親たちに伝えたいことは? 加藤さんに、そう聞くと「自分ができたことに◯を付ける意識を持ってほしい」と、力を込めた。
「先日もフェイスブックのグループで、スーパーで子どもが騒いでしまって、周囲の人に『静かにさせろ』と怒られたという投稿があり、自分が悪かった、次からできるだけ子どもを連れずに買い物に行こうと思うと書かれていました。私も当時、自分にずっと×を付けていましたし、ペアレント・トレーニングに来る方も自分の失敗やできなかったことをたくさん挙げます。でも1日の中でやれていることもいっぱいあるはず。
ご飯を作りたくないと思ったけど、子どものためと思って作ったり、朝、起きたくなくても、子どもの支度をしなきゃと起きたりする日がありますよね? 自分1人だったらやらなかった、子どものために頑張っていることは、一つひとつに◯を付けていいと思います。それはどの親もみんなそう。そして、子どもの個性も認めてあげられたらいいのかなと私は思います」
(AERA dot.編集部・金城珠代)