空間の心地よさ、という日常の感覚を共有できないのは確かにつらいことです。家に帰っても安らげないことで疲れも癒えず、ストレスが溜まるほうのお気持ちも理解できないわけではありません。ただ、この言葉はただ相手を否定するための感情の投げつけでしかなく、何の解決にもつながらないということはご理解ください。
ご依頼を受けてうかがったお宅で、パートナー間のこういった感情的な問題が浮き彫りになるケースは本当にたくさんあります。当然ながらわたしはどちらの味方をすることもできませんし、感情的な問題そのものを解決することもできません。
片づけられない現状は「空間の問題」が原因で発生するものです。そこに住む人の暮らし方・片づけ感覚と収納の仕組みが合っていないだけで、その人たちご自身の人格とは全く別の問題。そう分けて考えることが、解決の第一歩だと考えています。
身近な家族に対してそういうふうに冷静に考えることは時として難しいものですが、かっとなって乱暴な言葉が出てしまいそうなときは、(これは空間の問題であって、人の問題ではない…)と心でつぶやいてみてください。
問題を解決するには、1つめの「片づけのルール」の見直しという具体的なアクションがすべて。夫側が主体的に関わるかどうかで大きく成果が変わります。必要に応じてわたしたちのような第三者、プロの視点も取り入れ、ぜひ積極的に家のことに関わってみていただけないでしょうか。
さて、さまざまなケースを例に説明してきましたが、すべての根底にある大事なポイントは、「相手の立場や思い、タイミングを推し測り、寄り添うこと」です。
夫が妻の家事をきちんと見て肯定してくれるのは、妻にとってとてもうれしいことです。面と向かって褒めない夫が、知人に「うちの妻は家をがんばってきれいにしてくれてるんです」と話しているのをたまたま耳にしたことで、やる気を持ち直した人もいます。妻の粗を探すのではなく、やる気やがんばりを肯定し、夫も家事を担う当事者である気持ちを、どうぞ忘れないようにしてください。
(家族の片づけコンサルタント sea(しー)、取材・構成/麻宮しま)