●初期対応での「6つの禁句」

 D言葉のほかにも、相手の怒りを再燃させる「不用意なひと言」が6つあります。

 その代表例が「会社の規定で」「会社の方針で」「事務処理上」といった表現です。これらは、こちらの都合を一方的に押しつけているように解釈されることがあります。

 また、「普通は」「一般的に」「基本的には」という言葉も、使い方によっては「上から目線」の印象を与えかねません。

 たとえば「普通は、そのようなトラブルが起きないはずなんですが……」と言われた身としては、「じゃあ、オレは普通じゃないのか!」と、カチンとくるわけです。初期対応では、こうした相手を不快にさせる言葉に十分注意してください。

 ただし、過剰要求を繰り返す悪質なクレーマーに対しては、その限りではありません。丁寧な言葉づかいをしながらも、ドライに言い切ることが必要です。

●最初の5分間は徹底的に演じ切れ

 初期対応は、最初の5分間が勝負です。5分間というと、ずいぶん短く思うかもしれませんが、相手の怒気を帯びた声を聞いていると、結構長く感じるものです。

 しかし、決して気を緩めてはいけません。クレームの初期対応は、比較的マニュアル化しやすいように考えられがちですが、油断すると思わぬ失敗をおかします。

「受話器を置く前に、フッとため息をついてしまった」

 特にクレーム電話への対応では、そうしたことが起こりがちです。一瞬の気の緩みから話がこじれてしまうことがよくあるのです。

 電話は声だけのコミュニケーションであるため、「声が小さい」「早口だ」と文句を言われることもあります。また、相手の大声につられて自分の声にも力が入ってしまい、いつの間にか論争になってしまうケースもあります。

 クレーマーの自宅を訪問した際にも、「顔がニヤけている」「お辞儀の角度が悪い」「名刺の出し方が無礼だ」などと叱られることがあります。

 言いがかりに近いことも少なくありませんが、初期対応では「演じ切る」ことが大切です。上辺だけの猿芝居ではなく、本気でひと芝居打つ覚悟が必要なのです。

『対面・電話・メールまで クレーム対応「完全撃退」マニュアル』では、対面・メールでの正しい対応法、ネット炎上を鎮火させる方法など、クレーマーの終わりなき要求を断ち切る23の技術を余すところなく紹介しています。

 ぜひ使い倒していただき、万全の危機管理体制を整えた上で「顧客満足」を追求してください。

(参考記事)
クレーマーの長電話を強制終了する シャットアウトフレーズ“3連コンボ”

援川聡(えんかわ・さとる)/(株)エンゴシステム代表取締役
 1956年広島県生まれ。 79年大阪府警察官を拝命。95年に大手流通業(株)マイカルに就職。元刑事の経験を生かし、トラブルやハードクレームの対応にあたる。適切で確実な解決術は高い評価を受け、業界団体の講師を務めるなど悪質クレーム処理の専門家として認知される。2002年、「困難なクレームを解決し、企業の危機管理を援護する」をモットーに(株)エンゴシステムを設立。豊富な現場経験と独自のノウハウをもとにリアルタイムで企業、医療機関、役所等をサポート。常に数十社と顧問契約を結び、これまでアドバイスした件数は5000を超える。講演・セミナー講師を年間100回以上務めるほか、新聞・雑誌への寄稿、NHK「ニュースウオッチ9」、日本テレビ系「news every.」、フジテレビ系「プライムニュースイブニング」などテレビ出演も多数。

 著書に『現場の悩みを知り尽くしたプロが教える クレーム対応の教科書』、『クレーム処理のプロが教える 断る技術』(幻冬舎)、『超プロがついに明かす クレーマーの急所はここだ! どんな問題もすべて解決! 』(大和出版)などがある。